第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十九話 百鬼夜荒 弐
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迫りくる暴虐に対し椛は左に持つ楯を構え微動だにしない。
そんな物などで身を護れるはずがない――――この光景を客観的に見る者がいればそう断じたであろう。そしてその意見は概ね正しいのだ。
――――此処以外の場所でなら。
破壊の鉄槌が椛を叩き潰す――――と思われた、その瞬間――――
椛が構えた楯に巨拳が触れた――――まさに、その瞬間――――
何かが砕ける音と共に――――巨人の拳が、否腕が天空目掛け空を切っていた。
王儀には何をされたのか、は理解できなかったが何が起こったのかは瞬時に把握した。
事は至極単純である――――弾き返されたのだ。
王儀でなくとも驚嘆するだろう、そんな事が可能なのか?と。
『楯』の主な用途は身を守る事。
相手の攻撃を正面から受け止める、受けずに往なす――――そして『弾く』である。
だが多くの者が勘違いするが『弾く』という行動は『受け止めた後押し返す』事ではない。
楯に相手の攻撃が触れた瞬間――――その刹那とも言える一瞬だけ自分と相手の攻防力が『拮抗』するのだ。
つまりその刹那の間だけ相手の攻撃がいかに重かろうと、圧倒的であろうと意味は無い。
その瞬間に受けた攻撃を任意の方向に叩くのである。
ある程度の差なら他の白狼天狗にも出来るが、王儀の巨人並みになると不可能だ。
椛の『眼』があって初めて可能となる荒技と言っていい。
だが攻撃を弾いた椛自身も流石に無傷ではいられず、砕けた楯の欠片が宙に舞う中全身に受けた衝撃に顔を歪めていた。
その様では追撃など不可能だろう――――そう椛には。
どんなに個体で力量を持とうと天狗は連携する。
単独で動く事の方が稀であり、最低でも二人一組で行動するのだ。
そして椛には専属の相棒がいる。
一陣の疾風が遥か彼方より翔け抜け、『神速』と言っても過言では無い速度で巨人の胸板へと蹴りを打ち込んでいた。
その蹴りは螺旋を描く暴風を纏っており、まるで風の螺旋槍と見間違うほどだ。
風を纏うのは鴉天狗の文――――この瞬間……王儀の周囲への警戒意識が逸れ懐が空く――――その好機を椛と王儀が戦闘を始めた時から伺っていたのだ。
難敵なのを見抜き確実な一手で仕留める、椛と文はそう無言のやり取り行い今の今迄待っていたのである。
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?』
王儀の雄叫びと螺旋槍の鑿岩音が二重奏の様に響き渡り、数瞬後―
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