第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十九話 百鬼夜荒 弐
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極度に苦手であり形を維持させる事が出来なかった。
しかしその失敗が、今彼女が振るっている“護謨の様に撓る鉄”を生み出す結果となり、彼女にのみ許された『遠距離物理斬撃』を完成させる事となる。
最大で五十mという射程を持ち、加えて夜の森で隠遁術を使う椛にとって此の戦場は独壇場と言っても過言ではないだろう。
しかし椛の斬撃の直撃を受けているにも関わらず、石の巨人は微動だにせず即座に反撃に転じてくる。
彼女の一撃が軽いのではない――――王儀の防御が強固なのだ。
『どれだけ』『何処を』攻撃しても防御を抜けない――――それが双方の一致した見解である。
王儀の攻撃が一撃でも入れば椛にとっては致命的であり、その逆で椛の一撃では傷は与えられない。
結果の見えた一方的な攻防――――――――王儀はそう思っていた。
今まで同じ事の繰り返しだった戦局が唐突に変化したのだ。
信じられない事に椛が巨人と正面切って対峙する――――という無謀極まりない行動をとって。
『逃げ回んのはお終いかッ!おいッ!』
「えぇッ!準備は整いましたッ!真っ向勝負ですッ!」
正面切って相対する椛と石の巨人は、どう見繕っても像と蟻の構図である。
無謀を通り越しもはや暴挙に近い行動。
何か企んでいる……王儀の頭にそんな思考が過ぎるが――――それ以上に彼はこの状況に昂ぶっていた。
鬼という種族全てに言える事だが、彼等は策謀や策略と言った妙手を嫌う。
卑怯云々も併せて正面から掛かってこない者を嫌悪するからだ。
故にどんな相手であれ、例え敵対する者であっても彼等は正面切って挑んでくる相手に無条件で好意を抱く。
それは理屈以上に本能的なものであり抑えようがない。
『ハハハハッ!良い度胸じゃねーかッ!なら――――遠慮無くいくぜぇぇぇぇッ!』
元々物事を難しく考えるのは苦手な王儀である、相手が受けて立つと言う以上それに全力で答えるだけだ。
逆に言えば策謀が有ろうが正面から叩き潰す、と言う彼の自信の表れなのかもしれない――――彼の目指す先は姉である勇儀や萃香と言った高みなのだから。
巨人は地面に垂れ下がるほど長い腕を勢い良く振り上げ、その拳が頂点に達した瞬間――――地上にいる椛目がけ振り下ろす。
振り下ろされる巨岩の拳は、まるで地上に落ちる流星の様であり、あらゆるモノに死を与える破滅の鉄槌の様でもある。
それを見れば誰であろうと『死』を覚悟するだろう――――しかし椛の瞳に絶望は宿っていなかった
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