百三 毋望之禍
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たもので、現在対峙しているこの少年は本当に子どもなのだろうかと足穂は錯覚を覚えた。
「…人はいつか死ぬものだよ」
ナルトは穏やかに微笑む。しかしながら、口にした言葉はとても重過ぎて、そして切実めいたものだった。
「――そんな事より、失礼ながらお訊ねしたい件が幾つかあるのですが…」
自らの死の予言をそんな事と一蹴して、ナルトは足穂へ問うた。
「此度の紫苑様の警護の任、何ゆえ各国に依頼なさらなかったのですか?依頼を受けた身、このような事をお訊ねするのは不遜ですが、火の国にほど近い御国故、普通なれば木ノ葉隠れの里に依頼するのが条理なのでは…?」
至極丁寧なナルトの質問を受けた足穂は微塵も機嫌を損ねる事なく、返事を返した。
「疑問を抱かれるのも無理はありません。確かに火の国と我が鬼の国は同盟を結んでおり、木ノ葉隠れとも親交関係にある…。ですがある一件で、聊か溝が出来まして…」
徐々に顔を曇らせる足穂に、ナルトが話の続きを促す。
国の内情故、普段の足穂なら決して話さない内容なのだが、ナルトの前では何故か口を滑らせてしまう。自然と唇から紡がれる鬼の国の込み入った話を足穂は淡々と語り続けた。
「先ほどの予知ですが…紫苑様が予知なさるのは大体においてお傍に仕える者達の死だけです。というのも、死を予知された者は紫苑様の為なら命を投げ出そうという者ばかりでした。もし、彼らが予知を裏切り、生き延びたとしたら、」
そこで一度唇を噤んだ足穂の言葉尻を捉え、ナルトは己の予想を静かに告げた。
「――命を落としていたのは紫苑様だった?」
「…仰る通りです。故に近頃では鬼の国の者でありながら、紫苑様の予知を賜わるのを恐れ、避ける者さえいる有り様…。そんな紫苑様に心を痛めた者が仕出かしてしまった事件こそが、木ノ葉隠れの里との親交関係に亀裂を入れてしまったのです」
悲痛な面立ちで顔を伏せた足穂の話に、ナルトは黙して耳を傾けた。白と君麻呂も足穂が話し始めてからは沈黙を貫いている。
暫しの静寂の後、足穂は意を決したように打ち明けた。
「鬼の国の衛兵の一人…私と旧知の仲だったススキという者が紫苑様を案じるがあまり、木ノ葉隠れの里に無断で潜入したのです」
「…何の為に?」
そこでようやく口を開いた君麻呂が問うと、足穂は益々沈痛な面立ちで俯いた。
「鬼の国の巫女は死ぬ事が許されない。予知された者は巫女の身代わりとなって死ぬ事で巫女を生かす…これが巫女と鬼の国に住まう者に与えられた運命なのです。おそらくススキは…紫苑様を巫女の呪縛から逃れさせたい一心だったのでしょう。その何らかの方法が載っている巻物を彼は探し求めていた。そしてそういった希少な類が載っている書物は大概が忍びの里にある。…ですが、何度交渉してもそんな秘蔵の品の貸し出しを里
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