暁 〜小説投稿サイト〜
一人のカタナ使い
SAO編?―アインクラッド―
第二章―リンクス―
第18話 夕暮れの死闘
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メートルはあるだろう。
 左手に入っていた力が抜け、カタナを落としそうになるが、意識を集中して何とか防ぐ。反対の右手で槍の柄を握り、抜こうと試みるが、抜けない。それどころか、力をより入れられて、貫通せんとしているぐらいだ。少しずつ、また僕のHPゲージが減少していく。
「くっそ……!」
 やはり、どれだけ力を入れても抜けない。
 片手剣、短剣、片手槍。三つの武器を扱うプレイヤーなんて、攻略組にもいない。しかも、それぞれリーチの長さが違うため、どんな状況にも対応できる、まさに万能プレイヤーだ。攻略法が掴めない。
 そんなことを考えている間にも、僕のHPゲージは減っていっている。残りは三割ほどになっていた。
 ――こうなったら、イチかバチか……。
 死に近づきつつあるというに、まだ冷静さを保っている思考回路を全力で駆使して編み出した博打を実行しようと、槍から右手を離す。そして行動に移そうとしたとき――
 トス。
 という奇妙な音が聞こえた。次に槍に込められていた力がいきなりふっと抜ける。
 何事か、と思い目の前のプレイヤーをあらためて見ると、右手は槍から離れていて左手で掴んでいる。――掴まれていた右手の甲には、十センチほどの釘のようなものが貫通していた。
「――悪いけど、邪魔させてもらうよ」
 声のする方向を見ると、右手に剣を携えた黒衣の剣士が立っていた。その姿を見て、僕は今日でもう何度目かわからない驚愕に襲われる。
「あ、キリトだ」
「『あ、キリトだ』じゃなくてさ……何でこんなことになってるんだ、ユウ」
 キリトは僕の方へ駆け寄り、槍を強引に引き抜いたあと、結晶を使って僕のHPゲージが右端まで全回復する。ここまでで要した時間は一、二秒ほどだ。
「ごめん、助かったよ」
「貸し一つってことで、よろしくな」
「はいはい、わかりましたよ」
 カタナを構えながら、キリトとやり取りをする。向こうは、右手に刺さっていたのを抜き取り、僕らの方を見ていた。フードの奥から射る目線は、さっきまでよりも鋭いものになっている、気がする。
「なあ、ユウ。さっきも聞いたけど、何がどうなってるんだ? お前、誰かに襲われるようなことしたのか?」
「わかんないよ、聞いても答えてくれないし。僕が聞きたいぐらいだよ」
「そりゃあ、また厄介なことで……」
 そこまでキリトが言ったところで、フードマンは槍を使って僕の方を突いてくる。体を捻らせ、回避してカタナで弾き返す。そのあとにキリトの元に近寄り、囁く。
「キリト、麻痺毒持ってる?」
「まあ、そんなにレベルは高くないけど、あるぞ」
「なら、それで相手を痺れさせてくれない? 僕が引きつけるから」
「わかった」
 数秒間会話を交わしたあと、僕はフードマンに突撃する。前よりも体が軽かった――一人じゃないか
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