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魔術師にとって不利な世界で、俺は魔法を使い続ける
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ている。贅肉など一つも無いような体をしているものの、筋肉に固められているのではなく、アスリートや肉食動物を思わせるしなやかな体駆。髪はやや長めではあるがごく普通のショートヘアーで、若干濃紺色に見えなくもない。瞳は暗い橙色。
「はぁ……。女なんだったら先に言っておけばよかっただろうに……。なぜ自分の本性を隠したがるのか、オレには全く理解できん」
 ゼロの言葉に生涯をかけて絶対に訂正しなければならない誤解を見つけ、俺はもどかしくなって首を振る。それでも多くの人が冗談を言うときのように口角が若干上がっているが、実際何を考えているのか読み取り辛い。
「誤解だ。何度も何度も言われてきた。お前だけは分かってくれると思っていたのに……」
 探りを入れる役目も兼ねて俺もマジメトーンのジョークで返す。
「さっき知り合ったばかりだろ。まだ俺はお前を信用していないからな」
「悪かったな」
 こんな状況で冗談の往来ができるとは思ってもみなかった。意外に人間は舐められたものじゃないな、と場違いな事を思いつつ、顔を見合わせて互いに笑みを溢す。
「冗談だ。アンタの言う事に嘘なんか含まれていないってことぐらいちゃんと分かってるさ」
 友だち付き合いの少ない俺がこの世界に来て初めてまともに会話した者を裏切れるほど、俺は無慈悲ではない。そろそろ引き際か、などと思い、一旦会話を打ち切る。その代わりに、宙に浮きっぱなしの男の声に耳を傾ける。
「先に自己紹介をしておこう。私がゲーム会社《フォーレイズ》開発部リーダー兼この世界の支配者、湊静夜(みなとしずや)だ。諸君らが今一番気に掛かっている事、それは『ここはどこか』と『なぜここにいるのか』だろう。少なくとも私がこの状況に陥った場合、まず気になるのはそれだ。勘が鋭い者はもう気が付いているだろうが、ここはリクター製作のゲーム、ガルドゲート・オンラインの世界だ、そう思ってくれて構わない。」
《フォーレイズ》は俺の知っている中でも格段に知名度の低いゲーム会社だ。相当なゲーム愛好家である俺でさえ、プレイした作品は一つしか無く、そこまで大作ではなかった。そんな会社がなぜ、ここまで大規模な一流ゲーム会社の作品を横取りできたのか、俺の頭の奥底に引っかかる。
 そこまで考え込んだ所で、もう我慢の限界、とでも言いたげな切羽詰まった声が響きだす。
「俺達はファンタジー世界の住人じゃないんだ!さっさと元の世界に返しやがれ!」
 湊と名乗った男を挟んでちょうど俺と反対側ぐらいから詰問が聞こえる。若い男の声だ。
 口にこそ出さないが、俺も心の中では同感だ。疑問を口にするとその瞬間現実から永久に引き剥がされそうで怖い。しかしれっきとした疑問感は持っている。
 すると湊は、まるでこの質問を予想していたかのように滑らかに答え出す。
「ゲーム世界、とい
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