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魔術師にとって不利な世界で、俺は魔法を使い続ける
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 並走して来た男が、先刻の疑問の続きを問う。
「俺はクロト!お前は?」
 走行に労力を欠いているために必死になって答えると、すぐに答えが返ってくる
「オレはゼロ。暫く世話になるかもしれないが、よろしく頼む」
 簡潔に纏められた分かり安い返答に小さい頷きで返した俺は、既に止んだアラーム音の正体を早く探るべく、ダッシュのスピードを更に数ギア上げた。
「面倒な事になったな……」
 小さな呟きは風の音に遮られ、疾駆する相手には聞こえていない。

 
 恐らくは中央広場であろう空間に辿り着いた俺は、そこにあったものを見て騒然とした。
 どれだけの人数が集まっているのか想像もつかないほどの人の群れ。いや、ここが本当に〈ガルドゲート・オンライン〉の世界なのなら、集まっているのは5万人、もしくはそれに近い数の人間がいることになる。凄まじい程の人口密度だが、俺達の用に一旦大きく移動した、あるいはそれに準ずる行動をしたプレイヤーは現時点では見当たらない。
 だが俺が驚愕したのはその事ではない。多少慌てているプレイヤー群の中央、避けられているようにも見える人物が、全く動じずに立っている。その人混みは、ほぼ全員がRPGへと出て来そうな、具体的には皮鎧やら剣、杖を身につけているのに対して、彼は武具の類は一切装着せず、白衣に眼鏡と背景が違えば医師に見えるであろう格好をしている。しかしそのイメージを頭に被った大きなフードが打ち砕き、真っ暗なフードの奥は時折眼鏡がキラリと光る以外は顔の特徴が分からない。
 ふいとその男が上向くと、驚くべき事に彼の体が浮いていく。重力を一切感じさせない滑らかな動きで空中を浮上し、地上から数メートル離れた地点で静止したその人間は、痩せ身でいかにも柔和そうな体型には似合わない、どこか嘲笑ったような、それでいてやけに自信ありげな声色で、周囲の見上げるプレイヤー集団へと呼び掛けた。
「愚かで、しかし幸運なプレイヤー諸君。私の世界へようこそ。これより、VRMMORPG、ガルドゲート・オンラインのチュートリアルを開始する。秩序ある質問はいつでも受け付ける。応じるかどうかは別にだが、遠慮なく聞いて頂きたい」
 呆然と見上げる俺達の視線の先で、その男は何かを失敗したかのようにぽりぽりと頭を掻く。
「失礼。何度もシミュレートしていた筈なのだが、忘れっぽいのは私の癖でね」
 言いながら男は左手の人差し指と中指を二本揃え、目の前の空間に軽くタッチする。するとそこには、薄い水色のウィンドウ、操作パネルと思しき物が現れる。そのまま二本指でタッチパネルを操作するように複数の工程をこなした。
 すると、俺の目の前、いや、ここにいるプレイヤー全員の目前にちょうどあの男とウィンドウの距離に比例する何も無い空間に、これまた全く同じ色のウィンドウが表示され
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