外伝〜帝都への帰還〜後篇
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穴を開け………領土を拡張することで新たなる発言権を得るか………」
宰相の言葉を聞いたオリビエは静かな表情で語った。
「フフ、やはり貴方は私の一番の理解者のようだ。改めて――私に協力なさい、殿下。貴方が協力してくれれば私の改革も勢いづくでしょう。腐敗した貴族勢力も互いに結託する暇もないまま崩壊へと導かれる………―――それは貴方がもっとも望んでいる事のはずだ。」
「………………宰相。一つだけ聞かせてもらおう。”結社”とはどのような関係だ?」
宰相の誘いにオリビエは答えず、真剣な表情で尋ねた。
「フフ、何を仰っているのかいささかわかりかねますが………ただ、改革のためならば利用できる要素は全て利用する………それが私の政治理念ですよ。」
「……なるほど。確かに我々は気が合いそうだ。しかしだからこそ………その申し出は断らせてもらおう。」
「ほう………?」
オリビエの答えを聞いた宰相は驚いた表情でオリビエを見つめた。
「確かに私は、腐敗した貴族勢力をあまり好きにはなれない………いや、貴方の言う通り憎んでいると言ってもいいだろう。だが……それ以上に貴方のやり方が恐いのだよ。かの”覇王”より……ね。」
「……………………………」
「貴方のやり方はおそらく、ある種の幻想を作り上げることで国家全体を熱狂に巻き込むことだ。……それこそ常に戦場の前線に立ち、兵達を熱狂へと導く”覇王”のように。……その熱狂の中において確かに旧勢力は打倒されるだろう。だが………一度回り始めた歯車がもはや止まることはありえない。全てを巻き込みながら………際限なく成長を続けていくだろう。”覇王”はそれがわかっていて、”百日戦役”後は静かに世界を見守りながらも、世界をゆっくりと成長へと導いているのだろう。………宰相。貴方は覇王と違い、それがわかっていないように見える……本当にわかっているのか?」
「ハハ、もちろんですとも。―――まさにそれこそが私の改革の第一段階なのですから。」
オリビエに問いかけられた宰相は豪快に笑った後、不敵な笑みを浮かべて答えた。
「…………っ………」
「その先は殿下………貴方が私に協力する気になったらお教えするといたしましょう。まずは納得のゆくまでご自分の足場を固めるがよろしい。………もっともそのためには貴方が嫌っている貴族勢力すらも手懐ける必要があるでしょうがね。」
「フッ………何もかもお見通しという事か。」
宰相の言葉を聞いたオリビエが口元に笑みを浮かべたその時、正午を表す鐘の音が聞こえてきた。
「正午の鐘………そろそろ船が到着しますか。」
そして宰相はソファーから立ち上がってオリビエを見つめ
「―――それでは殿下。私めはこれで失礼いたします。二週間後…
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