巻ノ四十一 石田三成その十一
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「ならばよいな」
「まあ一人が飲み干してはいかんがな」
霧隠は笑って清海に顔を向けた。
「そうであるな」
「いやいや、わしもそこはわかっておるぞ」
清海はその大きな口を開いて霧隠に笑って返した。
「しかとな」
「しかし御主の口は大きい」
海野も清海に言う。
「気をつけよ」
「佐助、御主もじゃ」
筧は猿飛に釘を刺した。
「茶が好きじゃからな」
「うむ、わかった」
猿飛は筧の言葉に素直に頷いた。
「では慎もうぞ」
「まあ細かいことは気にせずにな」
幸村はお互いに話す己の家臣達に穏やかな微笑みで告げた、その笑みはまさに大器を持つもののそれであった。
「共に飲もうぞ」
「ここは我等が出会えた祝いです」
石田は茶を淹れはずめつつ話した。
「ですか畏まらずに」
「皆で、ですか」
「絆を深める為に飲んでいく」
「だからですか」
「特にこだわらずにですか」
「飲めばいいですか」
「はい、飲み過ぎるだの気にせずに」
そのうえでというのだ。
「飲みましょうぞ」
「石田殿がそう言われるのなら」
「我等もです」
「飲ませてもらいます」
「是非」
「はい、それでは」
こうしてだった、石田は茶を淹れてだった。
一同は石田が淹れた茶を回し飲みした、そして。
皆が一回りして最後の一口を兼続が飲んでだ、石田に言った。
「結構なお手前で」
「いえ」
こう言葉を返した石田だった。
そしてだ、石田は一行にあらためて言った。
「それではです」
「はい、次はですね」
「大坂にです」
「行くのですな」
「都から大坂には」
今度は兼続が言って来た。
「船で行きますので」
「川をですな」
「はい、進んでです」
そしてというのだ。
「大坂まで行きます」
「川を使えばですな」
「都から大坂はすぐです」
それこそというのだ。
「このことは源四郎殿もご存知と思いますが」
「はい、以前はです」
前に大坂に行った時のことをだ、幸村は兼続に話した。
「歩いていきましたが」
「お考えがあってですな」
「はい、その方が都から大坂への道を学べると思って」
「それで、でしたか」
「歩いて行きましたが」
「この度はです」
「川で、ですな」
「船を使ってです」
そのうえでというのだ。
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