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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十四話 第三次ティアマト会戦(その3)
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敵の両翼の攻勢を止めるには内側からは無理だ。外側から止めるしかない。

「駄目だ! 第三、第九は損害をかなり受けている。敵の中央部隊の攻撃を受けきれまい。その後は我々が粉砕され敵の中央突破を許す事になる」
論外だと言わんばかりの口調だ、無理も無い。

「我々も出るのです。中央は第三、第九と我々で戦線を構築するのです」
「!」
ドーソン提督の目が飛び出すかと思うほど見開かれた。

「リスクの大きい作戦です。しかしこのままでは、なすすべも無く殲滅されるでしょう。他に手がありません」
「……」

ドーソン提督は助けを求めるかのように周囲を見渡した。しかし皆目を合わせようとはしない。提督は、戦況と私を見比べ始めた。汗が提督の頬を伝う。何度も唾を飲み込みながら私の顔を見ていた……。



■ 帝国暦486年12月3日 帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ エルネスト・メックリンガー

味方は順調に包囲網を作りつつある。このまま行けばクレメンツ、ケンプ両艦隊を敵の後背に回らせるのも難しくは無い。どうやら完勝できそうだ。司令部の空気も明るくなっている。皆安心しつつあるようだ。

短期決戦、誰もが納得する勝利、ヴァレンシュタイン中将から提示された命題は厳しいものだった。しかし何とか達成できそうだ。いや、それ以上の完勝と言っていいだろう。

「敵、両翼の艦隊、中央に向けて後退します!」
なんだ、一体。中央に後退? 自滅する気か?
「敵中央部隊、左右に分かれます!」

左右に分かれた? ……場所を交換する気か! いかん、今度はこちらが包囲される!
「クレメンツ、ケンプ艦隊に命令! 現在の敵は放置、移動しつつある敵の中央部隊に注意せよ!」

司令部にも混乱が生じている。何が起きているか判らないのだ。
いきなり衝撃が走った。旗艦の近くで爆発でも起きたか? 何が有った?
「後退しつつある敵がこちらに向けて攻撃をしています」

「!」
予想外の敵から攻撃を受けた所為で味方は混乱している。クレメンツ、ケンプの攻撃が止まった事で敵に行動の自由を与えてしまったか……。

「ミューゼル艦隊、直属艦隊に命令、中央に移動しつつある敵に対し攻撃せよ」
上手い手だが、所詮は奇策だ。敵の中央は薄くなる。それではこちらの攻勢は防げない。中央突破で一気に勝負をつけよう……。

「敵、予備部隊が前線に出てきました! 攻撃してきます」
「!」
敵は予備部隊と後退しつつある部隊で戦線を構築しつつある……。

どうする。味方の両翼は敵の新たな両翼の動きに牽制されて本隊との連動は難しくなっている。敵の中央部隊は二万隻は有るだろう。こちらは直属艦隊、ミューゼル艦隊合わせて三万隻弱か……。

攻撃をするべきだろうか? 簡単には突破できないだろ
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