Side Story
少女怪盗と仮面の神父 14
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
リッテには判別不可能だ。
そんな事態に陥っているとしたら……想像だけで背筋が凍る。
ペンを握る手に過剰な力が入り、引いた線がいきなり太くなった。
海賊による、憎たらしくもまだマシな所業か。
空気を読まない大迷惑な同業者の犯行か。
確率は低いが、行きずりの泥棒か。
そうして、思考は再び最初に戻る。
探しに行きたくても、アーレストや自警団が許してくれない。
探し方さえも分からない。
言葉通り八方塞がりな室内で、複製した文字ばかりが積み重なっていく。
「ミートリッテさん」
「え?」
唐突に。
アーレストの両手が、ペンを持つ小さな手を包んだ。
何事かと驚いて見上げれば、燭台に照らされた神父の瞳がミートリッテをまっすぐに捉えている。
「もうすぐ外が暗くなります。今日は、このくらいにしておきましょう」
ペンを奪われ、教本を閉じられた。
いつの間にか暗くなっていた室内に気付き、もう夕方なのかと落ち込む。
(指輪が失くなって丸一日。私に残された時間はたったの二日。どうしたら良い? どうしたら、ハウィス達を護れる……?)
「ミートリッテさん」
「へ……、はい!?」
急に何を思ったのか。
椅子の横に回ったアーレストが、固く握った彼女の手を取り、背中を軽く支えてゆっくり立たせた。
そのまま、二人揃って廊下へ出る。
「よろしければ、ちょっとだけ散歩に付き合っていただけませんか?」
「散歩?」
「ええ。私は着任して日が浅いでしょう? そろそろネアウィック村の中を見てみたくて。貴女に案内役をお願いできればと」
(……ああ、そうか。着任早々捕り物騒動に巻き込まれてるんだし、一人で見て回る余裕はないんだ。私も、指輪が無いならここに居ても仕方ないし)
「別に、良いですけど」
村の隅々まで探れば、手掛かりくらいは転がってるかも知れない。
微かな希望を持って頷くと、アーレストは
「ありがとうございます」
今朝よりは血色が良い、柔らかな笑顔を見せた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ