Side Story
少女怪盗と仮面の神父 14
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半分を終え、何をしているのかと様子を窺っていた女衆の視線が外れ出した頃、漸く目当ての女神像に取り掛かった。
教会を預かる人間が、信仰対象の体現物に付着する埃を放置しておく訳が無い。清潔さを保つ為に何かしらの準備がある筈。
ミートリッテの読みは正しく、道具部屋の奥に折り畳み式の大きな梯子が備えられていて、登り下りは想定以上に楽だった。
確認ついでにきちんと掃除もしながら、実際手に取った例の鎖。落とさないよう慎重に合わせを外し、ゆっくりと回収して繋ぎ目を一つ一つ探った。
しかし……
指輪なんて、何処にも付いてなかった。
海賊が求める指輪は。鎖を通して腕輪にしたという指輪は、何度見直しても、指定された場所には無かったのだ。
アーレストには黙って遂行していた『依頼』だが、こんな非常事態が起きてはそうも言っていられない。
直ぐ様礼拝堂を飛び出し、外用の箒で落葉を掃いていた彼に鎖の存在を問い質せば……
「女神像を飾り付ける習慣ですか? いえ、女神アリアはどちらかと言えば質素倹約を善しとする御方です。アリア信仰にはそうした、華美を助長する考えはありませんよ。その鎖は……ええ。気付いてはいましたが、前任の神父と私とで担当者の交代もありましたし、何らかの意味があるのだろうと様子を見ていました。あと数日の間に関係者の申し出が無ければ取り外すつもりでしたが……それが何なのか、ミートリッテさんはご存知なのですか?」
返ってきた答えに、腰が抜けかけた。
アリア信仰に女神像を飾る習わしは無い。
アーレストは特別な意味があるのだろうと思ったから、わざと放置していた。
では、前任の神父も同じく、理由があると考えて放置したのかも知れない。
海賊達の言葉が真実なら、この辺りの人達は昔から悪人の世話までしてしまうお人好しだ。ありえなくはないが……不敬とも取れる女神像の扱いに対して、寛容すぎやしないか。アリア信仰。
「いえ……石像に鎖なんて、変わってるなぁと思っただけです。言われてみれば確かに、女神を飾る品としては味気無いかな。他に何かが付いている様子もありませんし」
鎖を顔の前に持ち上げ、アーレストにも見える角度でさりげなく全体を回してみる。
彼が一度でも鎖に触れていたのなら、指輪の有無は知ってる筈だ。ミートリッテの言葉にどう反応するかで「指輪が存在していなかった時点」を大まかに割り出せる。
鎖を透過して密かに窺ったアーレストは……その首を傾げ、きょとんと目を瞬かせた。
「何も付いてない、ですか?」
「!」
怪訝な表情で鎖を覗くアーレストは「指輪を知っている」。
彼が着任した時には、ちゃんと鎖に繋がれていた。
少なくとも、海賊達による「無い物を盗って来い」との無茶振りではなかったらしい。指輪が無くなったの
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