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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 14
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行き。
 用意したのは、古い布切れや(ほうき)やバケツなどの、掃除道具一式。
 持参したバッグの中から、家で使っている白無地のエプロンを取り出して装着し、礼拝堂の目立たない所から順に掃除を始める。
 真ん中の通路を境に左半分を終え、何をしているのかと様子を窺っていた女衆の視線が外れ始めた頃、ようやく目当ての女神像に取り掛かった。

 信仰対象の体現物に付着する(ほこり)を、神父達が放置しているとは思えない。
 清潔さを保つ為に、なにかしらの準備がある筈。
 ミートリッテの読みは正しく、道具部屋の奥に折り畳み式の大きな梯子(はしご)が備えられていて、女神像の登り下りは想定以上に楽だった。

 確認ついでにきちんと掃除もしながら、実際手に取った例の鎖。
 床に落としてしまわないよう、慎重に留め金を外し。
 ゆっくりと回収して、繋ぎ目を一つ一つ探った。
 しかし。

 指輪なんて、どこにも付いてなかった。

 海賊が求める指輪は。
 鎖を通して腕輪にしたという指輪は。
 何度見直しても、指定された場所には存在してなかったのだ。

 アーレストには黙って遂行していた依頼だが、こんな非常事態が起きてはそうも言っていられない。
 すぐさま礼拝堂を飛び出し、外用の(ほうき)で落葉を掃いていた彼に鎖の存在を問い質せば

「女神像を飾り付ける習慣、ですか? いいえ。女神アリアは、どちらかと言えば、質素倹約を善しとする御方です。アリア信仰には必要以上の華美を助長する考えはありませんよ。その鎖は……ええ。気付いてはいましたが、前任の神父と私とで担当者の交代もありましたし、なんらかの意味があるのだろうと様子を見ていました。あと数日の間に関係者の申し出が無ければ、取り外すつもりでしたが。それがなんなのか、貴女はご存知なのですか?」

 返ってきた答えに、腰が抜けかけた。

 アリア信仰に女神像を飾り付ける習わしは無い。
 アーレストは、特別な意味があると思ったから、わざと放置していた。
 では、前任の神父も同じく理由があると考えて放置したのかも知れない。
 海賊の言葉が真実なら、この村の人達は昔から悪人の世話までしてしまうお人好しだ。ありえなくはないが……

 不敬とも取れる女神像の扱いに対して寛容すぎやしないか、アリア信仰。

「いえ。石像に鎖なんて変わってるなあと思っただけです。言われてみれば確かに、女神を飾る品としては味気ないかな。他に何かが付いている様子もありませんし」

 細く長い銀の鎖を、自分の顔の前に持ち上げ。
 アーレストにも見える角度で、さりげなく全体を回してみる。
 彼が一度でも鎖に触れていたのなら、指輪の有無は知ってる筈だ。
 ミートリッテの言動にどう反応するかで、指輪が
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