第二部
狩るということ
じゅうきゅう
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場に落ちていた刀剣は全て持ち帰ってきた。ドックタグのような個人を認識できるものでもあれば良かったんだが、生憎見当たらなかったのでな。なので、同じ紋章が彫られている剣を持ち帰って来た」
そう言った私に彼女は力無く頭を下げる。
「それは、本当にありがとうございます。騎士として任命される際に、国王から下贈された私達にとって、命よりも大切な代物です。少しは仲間達も浮かばれます」
とは言っても、命あっての物種だろう。そうは想っても口には出さないが、彼女自身も少なからずそう感じている筈なのは手に取るように分かる。
聞けば、この国はここ数十年以上に渡って大きな戦いは起きてないと言う。隣接す国は同盟国、もしくは属国と呼ばれる国ばかりであり、肥沃な大地と海産物にも恵まれ、豊かな国であり比較的治安も安定しているということであった。
また、先にもあったように近隣の国とは友好な関係を結んでいるため、必要な物、足りないものは補い合うことで、相互の利益を損なうような取引は行われことはないという。
もちろんそれは国同士の話であり、国民、延いては領民などのミクロな単位で言えば当然犯罪や揉め事なども起こるし、魔物や混沌獣などがいる世界なのだから、そう言った自然災害的な被害も当然のごとく起こるとのことだ。
とまあ、そんなこんな安定した国であるから、彼女は職業柄人死にには慣れていても武装した集団、それも軍という枠組みにおける戦闘のプロが大量に死する瞬間など、早々お目にかかったことがなかったようだ。
更に言ってしまえば、彼女自身その場で被害にあっており、死にかけた経験を持っているのだからその想いはひとしおだろう。
死んでしまえばそれまで。
死ぬ間際になど、地位も名誉も関係ないのだ。
名誉と誇りに生きる種族にあるまじき言動ではあるが、それが私の本音でもある。
ただ、そういった生き方を否定しようなどとも思っていないし、人として大切なモノであるとも認識している。だから、彼女がそれを持ち帰りたいと言ったとき、私は一も二もなく了承したし、そのつもりであった。
「いま、それはどちらに?」
「安心しろ。ちゃんと保管してある」
「案内していただいてもいいでしょうか?」
「……着いてこい」
私の乗る船は高速移動船なので、25メートルプールにすっぽり納まる程度の大きさだ。なので、奥行きはあまり無いのだが、その分、多少高さに余裕を持たせている。
しかし、単独での運用を想定しているために、実はそんなに多くの設備を搭載しているわけでもない。
一番底部にあるエンジンルームには、この船を動かすのに必要な心臓部分はもちろんのこと、ワープの装置やそれに付随するフォールド通信装置の本体があり、また同じフロアに
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