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お好み焼き
1部分:第一章
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ている二人に対して告げる。
「もう授業がはじまるぞ」
「何や、もうそんな時間かいな」
「相変わらず時間ちゅうのは進むのが早いのう」
 そう言われても動じるところのない二人であった。反省している様子は当然ない。
「ほな。ちゃっちゃと席に着こうかいな」
「その前に言っておく」
「何や?」
「何じゃ?」
 桜も菜月も先生の言葉に顔を向ける。そのタイミングは同時だった。
「御前等、今日の昼休み職員室に来い」
「ああ、お好み焼き御馳走して欲しいんやな」
「そうじゃったら遠慮したらいけんで」
「御前等、わかってるのか!?」
 二人があまりにも反省している様子がないので呆れる先生だった。
「全く。職員室といったらな」
「何かあるんかいな」
「うち知らんで」
「説教に決まっているだろうが。全く御前等ときたら」
 その赤ら顔をさらに赤くさせての言葉だった。
「いつもいつも。何でこう仲が悪いんだ」
「こいつがお好み焼きは広島が正統言うからや」
「大阪のやつじゃなきゃいけんて言うけえの」
「そんなん絶対許せんや」
「あんなんいっこもあくか」
 とにかくそれぞれ引くことを知らない二人であった。
「何が広島やねん。変な焼き方覚えてからに」
「あれの何処がお好み焼きなんじゃ」 
 また言い合うのだった。
「お好み焼きはな。とにかく大阪のやつこそがほんまもんで」
「広島はお好み焼きの発祥じゃけえ。こっちが正しいじゃ」6
「ああ、もういい加減にしろ」
 遂に先生も完全に切れてしまった。
「もう職員室に来なくてもいいぞ」
「そうでっか」
「それやったら行かんけえ」
「久々に切れた」
 見れば本当に顔を真っ赤にさせている。どう見てもその仇名のゴリラブタである。名付けた人間はよく見ていると言うべきであろうか。
「こうなったら御前等で決着をつけろ」
「ケリつける?」
「腕っぷしけえ」
 菜月はこれまたやけに物騒なことを言い出してきた。
「それやったら毎日正統なお好み焼きで鍛え上げて栄養もつけてるうちの思う壺じゃ」
「何言うとるんや、アホか」
 桜も負けていない。というよりは嫌になるばで互角であった。
「うちは赤ん坊の頃からへらを持ってたんや」
 こう言うのである。
「それで来る日も来る日もお好み焼きを焼いとるんや」
「うちもじゃ」
「うちはちゃうで。何時間も焼いてな」
 本当に見事なまでのお好み焼き馬鹿である。しかもこれが桜だけではなく菜月までそうだというのだから実に始末の悪い話であった。
「それで何でも入れられて栄養たっぷりのお好み焼き食べてな。最強になったんや」
「最強はうちじゃ」 
 話が完全に堂々巡りの水掛け論になってきていた。
「うちの広島こそが最強なんじゃけえ。嘘つくなや」

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