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もう一つ、運命があったなら。
分岐点
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、当てもなく歩き続けた。

 周囲では、たくさんの人が死んでいる。

 今にも自分もそうなると、無意識のうちに感じてしまった。

 いやだ。あんな風に死にたくない。

 思っても、現実は自分を殺そうと襲い掛かってくる。

 体力の限界がきて、意識が朦朧とし、道の真ん中に倒れた。
 
 熱されたアスファルトはホットプレートのようで、その上に乗る自分は食べ物か何かなのか。

 頭は考えることを止め、身体の筋肉は固まり、心は生きることを諦めた。

 こんな悪夢から、救ってくれる人なんてこの世界にはいない。

 憧れたテレビのヒーローも、あんなものは都合の良い作り話なんだ。

 黒い月を見上げながら、死を待つ。

 ――――そして、気づくと自分の前には知らない男がいた。

 その男が何をしていたのかは分からない。

 ただ、身体に新しい何かが入ってきたのだけは感覚で分かった。

 男は泣いていた。自分を見て、泣いていた。

 腕に抱かれ、ありがとう、と何度も何度も男は言った。

 雨が降り始め、ゆっくりとその地獄は終わりを迎える。

 辺りには何も残っておらず、空に浮かんだ黒い月はいつの間にか姿を消している。

 生きている。

 そう気がついたのは、ずっと後のことだった。












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