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もう一つ、運命があったなら。
近づく運命
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りませんよ先輩。この成瀬家は大丈夫です。何せ、ガスの元栓は毎朝二回チェックしてますからっ!」

 腰に手を当てて胸を張る澪。必然的にその大きな二つの膨らみが強調されるのだが鋼の意思で目をそらした。先輩、つよい。

「いや、そういうことを言ってるんじゃなくて」

 この娘は時々メジャーリーグのクローザ―並みのド直球な天然を投げてくるから受け取るのが大変だ。
 
 それを打ち返す綾ねえのバッティングセンスも捨てたもんじゃない。俺は大抵その緩急について行けず三振する。なんの話だ。

 まぁ大丈夫か。澪も遅くまで遊んでくる女の子ではないし、俺もバイト以外はなるべく早く帰るようにしてるから何かに巻き込まれる心配も少ない。

 綾ねえは部活の顧問もしてるから遅くなることも多々あるけど、あの人ならば痴漢に襲われたとしてもむしろこっちから襲ったんじゃないかってほどボコボコに仕返すだろうから安心だ。綾ねえにだけは正当防衛という法律はなくした方がいいと思います。

 新年を迎えて一か月が経とうという時期で、どの部活も大会とかは少ないだろうからもしかしたら部活禁止になったりもするかもな。

 くそ、そうなったら綾ねえのお守が大変だ。フラストレーションが溜まって道場に連れていかれ技を決められるだけのカカシになりかねない。それだけは何とか阻止しなくては。

 必要なのは、美味しい食べ物とそれに比例するお金。どうしよう、またバイト代が無くなる。

「でも、本当に私は大丈夫です」

 どや、と言い張る澪。

 その細い手足を見ているとそうは思えない。完全に文化系女子である澪には綾ねえのように犯罪者の魔の手をあしらうことも出来ないだろうに。

「……凄い自信だな。その根拠は?」

「だって、私のそばには空也先輩が居てくれますから。えへへ」

 そう言ってもう一度満弁の笑みを浮かべる。やだ、先輩凄く恥ずかしいです。

「――――ったく、仕方ないな」

 可愛い後輩に頼られて嬉しくないわけがない。いいさ、それなら護衛でも何でもしてやる。対価はその笑顔で十分。

 力はないけれど、それでも確かに近くにいてやることくらいはできる。

「はい、よろしくお願いします」

 いつか本当の意味でも、澪を守れるくらいの力をつけなきゃな。







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