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狸の蓑
4部分:第四章
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第四章

「狸がどうしてここに」
「もしやのぞき!?」
 この辺りは見事な女の勘であった。
「のぞきでここに!」
「何と破廉恥な」
「ややっ!?まさか」
 娘達が驚きと怒りの顔で騒ぎだしたのを見て八兵衛も気付いたのだった。
「まさか気付かれた!?そういえば」
「やはりそこにいましたか」
「尼さん・・・・・・しかも婆あの」
 そういうことだった。ここで彼も気付いたのである。気付けばもうここにいては危ない。脱兎の如く逃げようとする。ところが。
「待て、こら!」
「逃がさないわよ!」
 早速娘達に風呂桶を投げ付けられる。
「この助平狸!」
「こうなったら!」
「容赦しないわよ!」
「う、うわ!」
 風呂桶だけでなく棒やら何やらまで出て来て殴られたり蹴られたりだった。八兵衛はほうほうのていで逃げ出す。逃げ出してもまだ狸の姿なのでこれまた注目を受けた。
「何っ、湯屋から狸が」
「これは一体」
「そいつのぞきなんですよ!」
「助平狸!」
 服を慌てて着て出て来た娘達が狸、実は八兵衛を追いかけつつ町の者達に叫ぶ。
「姿を消して風呂にいて!」
「こののぞき!」
「何っ!?そりゃ太え奴だ!」
「羨ましい・・・・・・いや許さんぞ!」
「そうだそうだ!」
 うっかり本音を出している者までいた。
「この助平狸、覚悟しろ!」
「死にやがれ!」
「う、うわあああああああっ!」
 町の人にも追いかけられ果てにはお侍の刀や弓やら槍まで迫りその中で何とか逃げ出す。危ういところで川に飛び込んでそこで蓑を脱いで何とか逃げ出した。泳ぎが上手いことが達者だった。こうして彼は息も絶え絶えになって全身切り傷やらうち傷やら瘤やら痣やらをあちこちに作ったうえで家に戻った。そのうえ全身ずぶ濡れの亭主を見て女房のおいそは驚くことしきりであった。
「御前さん、これまたどうしたんだい」
「訳は聞かねえでくれよ」
 八兵衛はうんざりとした顔でおいそに答えるだけだった。
「今はよ」
「何かわからないがとんでもないことに遭ったんだね」
「極楽から地獄だよ」
 喋るその口もその中があちこち切れている。どうにも痛くて仕方がなかった。
「本当にな」
「そうなのかい」
「とにかくだよ」
 ここで彼はまた言うのだった。
「人間地道が一番だな」
「!?何だい急に」
「助平心は禁物だ」
 八兵衛は言葉を続ける。
「特によ」
「何だかわからないけれどその通りだよ」
 釈然としない調子で亭主に言葉を返した。
「それはね」
「全くだよ。じゃあよ」
「今度は何だい?」
「裏で酒仕込んでくるぜ」
 仕事の話だった。
「ちょいとな」
「ああ、そうしてくんな」
 やはり亭主の言葉に首を傾げながら応えるおいそだった。
「何でも
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