第十話 弱さその三
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「減ってるし」
「ちゃんと食べてるよ」
「いや、うどん一杯だけだろ」
優花が今食べている若布うどんを見ての言葉だ、龍馬もそのうどんだがそれと共に他人丼も注文して食べている。
「前はそこにお握りとか付けてただろ」
「そういえばそうだね」
「それだけで大丈夫か?」
龍馬は心配する顔で優花に問うた。
「おやつもないだろ」
「うん、食べてないよ」
「俺は十時と三時に食ってるからな」
そのおやつをというのだ。
「パンとか果物をな」
「陸上部は走ってばかりだからね」
「エネルギー必要だからな」
「それで食べるんだよね」
「確かに御前は美術部だからな」
文化系の部活だからというのだ。
「運動はしないけれどそれでも」
「食欲がないんだ」
「それでか」
「これだけで充分なんだ」
「身体何処か悪いのか?」
龍馬はうどんを食べつつ優花に問うた。
「それだと」
「いや、別に」
「最近顔色も悪いしな」
優花のその顔を見た、見れば見る程だ。
顔色は青ざめていて目の光が弱い、その目の下にはクマが出来ていて肌もやや荒れている。龍馬はその彼の顔を見て言ったのだ。
「ちゃんと寝てるか?」
「一応は」
「寝られないとな」
「お酒かな」
「いや、疲れてる時はな」
酒よりもというのだ。
「牛乳がいいだろ」
「ああ、ホットミルクだね」
「それ飲んでな」
「寝ればいいんだったね」
「これ御前に教えてもらったことだろ」
龍馬は笑みを浮かべて優花に言った。
「ホットミルクを飲むとよく寝られるって」
「そういえばそうだったね」
「ああ、だからな」
「ホットミルクを飲んでだね」
「よく寝ろよ、やっぱり人間寝ないとな」
「睡眠が一番身体にいいからね」
「だから寝ろよ」
龍馬は優花のその力のない顔を見つつ言った。
「それで疲れ取れよ」
「じゃあね」
「そうしたら食欲も出るだろ」
「食べる方も」
「よく寝てな」
龍馬がそこからのことも言った。
「よく食う、これでな」
「健康になるから」
「寝ろよ、いいな」
「それじゃあね」
「自分の身体は自分でどうにかしないとな」
「身体は」
この言葉にだ、優花は。
自分のその身体のことを意識してだ、そして。
箸の動きを止めた、身体全体が強張った。
そのうえでだ、こう言ったのだった。
「僕の身体のことは」
「ああ、御前自身がどうにかしないと駄目だろ」
「そうなんだね」
「風邪ひいてもな」
龍馬は優花の事情を今はまだ知らない、だが彼を気遣って言ったのだ。
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