8部分:第八章
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第八章
「全く。どうしたものかしら」
「何かお姉ちゃんって厳しいわね」
「全くだよ」
ここでも二人の言葉は一致した。姉に対しては。
「俺達がそんなに信用できないのかね」
「実の妹夫婦なのね」
「少しは自覚しなさい」
最後まで厳しい言葉だった。名前が決まってもそれは変わらない。厳しい言葉はそれでも優しさもあった。だからこその言葉であったが二人には気付かせないだけだった。
「いいわね」
「何か凄い納得できないんだけれど」
「あんた達が納得できなくてもいいのよ」
言葉は容赦ないままだった。
「そんなことはね」
「いいのね、それは」
「そうよ、しかも全くね」
やはり言葉は言い切りだった。
「そんなことはどうでもいいのよ」
「つまり納得できなくても納得しろってこと?」
「その通りよ」
話を強引に終わらせるつもりだった。実際にそうしている。
「わかったわね」
「わかったわよ。それじゃあ」
「そういうことよ。これでこの話は終わり」
そのうえでこう告げた。
「後はね。どんどん食べなさい」
「ラザニアとお刺身をなのね」
「どちらも腕によりをかけたんだからね」
話はそこに向かった。料理なら流石に文句は出なかった。
「わかったわね」
「わかってるわ。それにしてもこのラザニア」
「美味しいでしょ」
「お姉ちゃんってパスタ作るの上手いわね」
「パスタだけじゃないわよ」
妹に返す笑みが不敵なものになっていた。そこには絶対の自信があった。
「言っておくけれどね」
「このお刺身も」
京介は刺身を食べていた。その鮭の刺身を。
「新鮮で美味しいですよ」
「お魚の一番美味しい食べ方は二つあるのよ」
一番と言いながら二つあるのは矛盾しているがそれでもこう述べるのである。
「まずは揚げること」
「フライや唐揚げ、天麩羅ですね」
「そう。そしてこれよ」
「お刺身ですか」
「この二つがやっぱり一番ね」
良美は完全に断言していた。異論をすることさえできないような圧倒的なものがそこにはある。そして二人もそれに何も言わないのであった。
「食べるのならね」
「そうね、それはね」
「言えてます」
「そのうちの一つよ。だからどんどん食べなさい」
「はい。じゃあ」
「あんたもよ」
妹に対しても言う。
「特に妊娠しているのだからね。頑張って食べなさい」
「頑張ってなのね」
「どれも栄養まで充分に考えてあるから」
このことも言い加えてきた。
「だからよ」
「そういえばこの御飯も」
「そうよ、玄米とかも混ぜてあるのよ」
御飯にまで仕込みをしておいたのだ。御飯の中には玄米の他に麦や若布、大豆等が入っている。その栄養バランスはかなりいいものである。
「あんたの為にもね」
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