4部分:第四章
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女に出されたのはグレープフルーツジュースだった。明るい部屋の中で薄い黄色のジュースが灯りを反射して眩く光っている。
「それで京介君はワインで」
「有り難うございます」
「ロゼでいいかな」
「ロゼですか」
「お刺身とパスタよ」
リビングに立って料理をしている良美が言ってきた。真っ赤なエプロンをしている。それがやけに似合っている。スタイルがいいとエプロンも似合うのだった。
「赤でも白でも偏ると思ってね」
「それでロゼなんですか」
「ロゼ好きだったわよね」
それを京介に対して尋ねる。良美の子供達が彼の横にあるソファーに座って楽しそうににこにこと笑ってアニメ番組を観ている。一家団欒であった。
「確か」
「ワインは何でも好きですよ」
京介はこう答えた。
「お酒なら何でも」
「あんたと同じね」
良美はそれを聞いて妹に声をかけた。彼女はそこでジュースを飲んでいた。
「そういうところは」
「そうかしら」
「そうよ。何だかんだ言って似た者同士じゃない」
そのうえで二人を纏めて言ってみせるのだった。
「意外とね」
「意外となのね」
「そうよ」
言いながら魚を切っていた。見ればそれは生の鮭の切り身だ。サーモンピンクと白のストライプのその肉を奇麗に切っていっている。
「私はそう思うけれどね」
「私はそうは思わないわよ」
「自分ではわからないものよ」
すぐにこう述べて妹の言葉を打ち負かしてきた。
「自分自身のことはね」
「自分がわからなくて誰がわかるのよ」
「自分以外っていったら決まってるじゃない」
また言い返す。
「他人よ。自分以外は皆他人だからね」
「何か馬鹿にされてる感じがするけれど」
「そう思うのは浅はか」
実に手厳しい。
「実際のところは違うのよ」
「そうなの」
「そういうことよ。さて、と」
ここで良美は声をあげた。
「これでお刺身もできたわ」
「あれっ、早いのね」
「あんた達を迎えに行く前にあらかた済ませていたのよ」
妹に答える。
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