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緋弾のアリア-諧調の担い手-
第四話
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悪いが飛び火だろうか。
今もあの一つの戦場と化した倉庫街での荒々しいマナの感覚が身体に残っている。

その戦場での損害金額は、かなりの値が逝く事になるだろう。あまり表沙汰に出来る件ではない。
魔族の自衛権が確立されているとはいえ、流石に無罪放免という訳にはいかない。

アクア・エデン…“檻”の外での事だ。それ相応の処遇を受ける事になるだろう。


「……さて、こいつはどうするかな」


その原因の一端である、肩に担がれた人外である吸血鬼に目を向ける。

命に関わる程の重症を受けた筈なのに、未だに生きている。
肩口から心臓へと切り裂かれた傷は治癒術式、更には卓越した回復能力によって、既に回復の兆しが見られる。

流石は人外といった所か。…まぁ、俺も他人の事は言えないけれど。
近くの真新しいビルの屋上に男を寝そべらせる。そして。

男の手に着けられた登録魔族を示すブレスレット調の登録端子から一応の所、情報を抜き取る。
そうして、その場から立ち去る。

しばらくすれば、この国の攻魔師達が男の身柄を確保しにくるだろう。
この吸血鬼も、先の一件での重要参考人だ。

もう片方の方どうなったかは知らないが、そう簡単には捕まらない事だろう。
…エーリゲネーアと言ったか。不意に、彼女の最後に見せた顔が脳裏を過ぎった。






1







「……ふぅ」


とあるビルの谷間、街明かりさえ届かぬ其処で、俺は安堵の息を吐いた。
そうして、ビルの外面のアスファルトにもたれ掛る。…夏とは言え、ひんやりとして気持ちいい。

濡れ羽色のローブを羽織っている為、同化する様に闇へと溶け込む。
一瞬、光さえも届かぬその場所を淡い光が奔る。

それが晴れた次の瞬間。
そこに佇立していたのは、未だ幼い中性的な顔立ちをした十代前の少年だった。


「……つ、かれたぁ」


今度は、明らかに疲労の色を見せた溜息を洩らす。
ほんの三十分程の事なのに、酷く疲れた。

鍛錬以外での初の実戦。実際の命の駆け引き。
前世でも何度か体験した事だが、何時になっても、こればかりは慣れない。

取るか、取られるかの世界。
一歩読み間違えれば、それは自身の死へと繋がる。

少年の時夜の顔にはくっきりと疲労が見え隠れしている。
それ程までにその駆け引きは、少年の精神を疲労させ、すり切らせた。

数分の時を経て…。


「…さて、行くか」


首元に掛けられた機械水晶を上着のポケットへとしまい込む。
変身術式で身元をぼかしていたとは言え、これはあまりにも目立ち過ぎる。

そうして、闇の迷宮を抜ける様に、俺はネオンの光が満ちる街中へと舞戻る。
暗闇に溶け込んでい
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