暁 〜小説投稿サイト〜
緋弾のアリア-諧調の担い手-
夏休みU
第三話
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易度は高いが、その分設計の自由が利くとされている。
マナを直接操作する此方側で例えるならば、ミニオンと同等の存在だ。

疑問は尽きる事がない。
吸血鬼以外の種族が、眷獣を使役出来るといった話は聞いた事がない。

―――眷獣。

大半の吸血鬼は自身の血の中に眷属たる獣を従える。
それが眷獣だ。半不老不死に近い主の命を対価に、強大な力を発揮する召喚獣。

眷獣の姿や能力は様々だ。
だが、もっとも力の弱い眷獣でさえ、最新鋭の戦車や戦闘機の攻撃力を遥かに凌駕する。

旧き世代の眷獣ともなれば、小さな村ごと一撃で消し飛ばす事も可能だと言われている。
その眷獣が吸血鬼以外の存在に宿っている。それが時夜が驚きを露にした理由であった。

…例え、寿命を長く設定された人工生命体でもだ。
命を対価にする眷獣は、そう易々と使えるものではないだろう。

呆然と立ち尽くす時夜の背後で、ドッ…と重たいナニかが投げ落とされた様な音がする。
驚いて振り返った俺が見たのは、重傷を負って倒れた長身の吸血鬼の姿だった。

肩口から深々と切り裂かれた傷は、心臓にまで行き届いている。

人間ならば即死。並の吸血鬼でも同じだろう。
いまだに息があるだけでも、旧き世代の肉体の強靭さが窺える。

だが、普通ならば即座に再生を開始する筈の彼の肉体に変化がない。

眷獣を失い、弱っているというだけではないだろう。
何か強力な力の篭った一撃を受けたのだ。


「…………」


俺は吸血鬼の男に近寄り、不得手だが時切の時間操作を使い、回復術式を施す。
淡い白色のマナが空間に迸り、男の身を優しく包んでいく。対象の時間を少し前まで、遡らせる。

……傷の治りが遅い。

内心焦りを覚えながら、そう思った。やはりは強力な呪力の宿った攻撃を受けたのだろう。
その種の攻撃が出来るのは人間の攻魔師―――祓魔師と呼ばれる高位技能の使い手だけだ。

だが、それは決して在り得ない事だった。
祓魔師とは即ち高位の聖職者だ。地位のある司祭や僧侶。

極東のこの島国で当て嵌まるのは神主や巫女、陰陽師などが当たるだろう。
彼らが、自ら市街地での私闘を行うはずがない。そんな事が許される訳がないのだ。


「……ふぅん、目撃者ですかぁ。さっきの氷の結界も君のモノだったりします?」


聞こえてきたねっとりとした狂気に満ちた男の声。
それに、時夜は吸血鬼から目を離して顔を上げる。

そこに佇立していたのは、身長180cm頃、年齢は二代前半といった所だろう。
肩口で揃えられた、暗闇でも光る金髪の外国人であった。その瞳は狂気に取り憑かれている。

右手に持っている金属製の柄のあるステッキの様な棒。
そして、纏っている神父の法衣が
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