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我が子
2部分:第二章
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ールを分解するには生野菜だ」
 それを出してきた。
「あと玉葱だ。焼肉は哲学だ」
「それを言ったらカレーは宇宙よ」
 話がカオスどころか異次元になってきていた。
「子供にはその宇宙こそが一番いいのよ」
「子供に大事なのは哲学だ」
 今度はそういう話になってきていた。
「特にニーチェだ。超人だ」
「そのままワーグナーかヒトラーにでもなるつもり?」
 ニーチェに関係する二人の歴史上の危険人物であった。どちらも非常に危険な人間なので名前が出ただけで普通の人は引く。普通の人なら。
「自分の子供を性格破綻者か独裁者にでもするつもり?」
「じゃあ宇宙は何なんだ」
「悠久の国インドよ」
 また凄い国を話に出す。
「インドの素晴らしさを子供に内包させるのよ。それこそが」
「インドか、笑止」
 今度は車田正美の漫画の様な言葉を出す京介だった。ポーズも目を閉じて少し俯き加減にしてそんなムードにしてしまっている。
「笑止!?何でよ」
「やはりドイツだ」
 何故かそれになるニーチェのせいだろうか。
「ドイツ!?」
「そうだ。哲学大国ドイツこそが子供に相応しい」
「そのままナチズムにかぶれて終わりね」
「何ィ!?」
「今更欧州贔屓なんて古いのよ」
 歩美は今度はそこを攻撃してきた。
「時代はアジアよ。とりわけインド」
「あんな訳のわからない国がいいのか」
「インド映画を見なさい」
 話が今度は映画に至った。
「あの素晴らしい芸術を。あれこそが映画よ」
「しょっちゅう見知らぬ人達といきなり踊ってストーリー展開がわからないうえに男の人は皆同じ顔でしかも異常に長い映画がか!?」
「そうよ」
 それがいいと力説する。
「あれこそが芸術じゃない」
「芸術はオペラだ」
 京介が出すのはそれだった。
「あのドイツオペラの哲学と芸術を融合させた素晴らしさこそが」
「伽藍としてるだけね」
 一言であった。
「何が何だかわからないわよ」
「インド映画が言うな!」
「ドイツオペラが言わないで!」 
 妊娠中でも喧嘩腰であった。
「何だ、あんな訳のわからないもの」
「いい加減ヴォツェックから離れなさいよ」
「ふん」
「ふん」
 最後は顔を背け合う。だがここで歩美が顔を背けさせたまま京介に対して問うて来た。相変わらずかなり剣呑な顔と声で問うてきたのであった。
「それはそうとね」
「何だ?」
「今夜、覚えてるわね」
「ああ、義姉さん夫婦と一緒にだな」
「夕食よ」
 それを言うのだった。
「わかってると思うけれど一緒に出るわよ」
「ああ、わかってる」
 こう歩美に返す。
「グラタンだったな」
「お刺身よ」
 随分とかけ離れてしまっている組み合わせだった。
「ペンネと牡蠣のグラタンよ」
「そ
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