夏休みT
第六話
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ンの刃は刀身を叩き折られて使い物にならない。
諧調の権能を使えばこの状況も何とかなるが、今の俺では発動までに時間がある。
それ故に、行動を起こした段階で刺し貫かれる。
“粒子化”の可能性も考慮したが、それを許す程に那月は甘くない。
思考に陥る時間も惜しい。月姉の鎖、神々の鍛えたとされる“戒めの鎖-レージング-”は並みの力では引き千切れない。
それは超常の力を持つ永遠存在においても例外ではない。
自身よりも上位のエターナルでも、一度掴まってしまえば引き剥がす事は困難だ。
しかも、鎖自体にマナ吸収の術式が施されている為にマナが徐々に削り取られていくのだ。
神剣の位は俺よりも下。だが、戦闘経験や技量がそれを補うかの様に高い。
遥かに格上の存在だ。つくづく、力の差を思い知らされる。年季の差を思い知らされる。
ミニオン50体の討伐も終了し、今現在は月姉との模擬戦中だ。けれど。
それも、もう終番で王手に近い。
最初の十分程は善戦していたと自負しているが、攻勢に出た那月の術式と空間圧縮。
更には、虚空より放たれる槍・剣、“戒めの鎖”によって戦況は逸した。
「…さて、もうおしまいか?」
日傘型永遠神剣である“聖域”を差しながら、優雅に空中に浮遊して俺達を見下ろしてそう口にする月姉。
俺はカナの方へと視線を向ける。
カナも鎖によって拘束され、戦闘で微かに切られた衣服の間から肌が見えている。
(………うっ)
俺はすぐさまカナから視線を逸らした。
そのまま見ている事が悪いと思ったのと、俺自身の保身の為に。
拘束されたカナは際どい体勢で、鎖によって幼いが女性らしい身体の曲線が露わになっている。
それにカナは俺よりも高い位置で拘束されており、穿いているのがミニスカートの為。
その、見えてしまうなのだ…下着が。
逸らした視線の先には俺が叩き斬り、無残にもその姿を成していない東京タワーの姿がある。
「………参りました」
これは実際の戦闘を模した戦闘訓練の為に、待ったは当然の様に存在しない。
俺は敗北による悔しさを味わい、渋面でそう告げた。
2
「さて、模擬戦は終わりだ」
「……ありがとう、ございました」
「…ありがとうございました」
最初にいたビルに戻り、那月は淹れた紅茶を手に、椅子に座ってそう言った。
汗一つかかず、疲れた様子もない。優雅に紅茶の入ったカップに口をつけている。
それとは対照的に俺達は疲れ果ていた。
衣服の傷などは月姉の力によって復元しているが、体力までは回復していない。
視界の端の映る東京タワーも何事もない様に、元に戻っている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ