暁 〜小説投稿サイト〜
緋弾のアリア-諧調の担い手-
夏休みT
第三話
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

それと同時に、炎も姿を消す。少女には危害を加えられないと感じたのだろう。

「今宵の実験は終わりですよ、エーリゲネーア」

「……はい、神父様」


エーリゲネーアと呼ばれた藍色の髪の少女が、静かに瞳を閉じた。
彼女は抑揚のない人工的な声で告げる。


「命令受諾。執行せよ、“黎明の羽根”」


その声が終わると同時、彼女の衣服を突き破る様に何かが迸った。

それは灰白く輝く翼だった。少女の細い身体よりも巨大な片羽の翼だ。
彼女の下腹部を突き破るようにして伸びったその翼が、生きた蛇の様に近くにいた男を貫いた。

男が苦悶に呻き、声を上げる。手から刀が滑り落ちる。
赤い液体が地面に滴り、大きく血溜まりを作る。

身体の内蔵をやられてはいるものの、貫通はしていない。
今ならまだ救出は可能だ。銃を携えて、弾丸と、極大の炎を吐き出す。

その翼は突き刺した男を荒々しく投げ捨て、銃弾と異能を弾き飛ばす。
そして腕の様に動き、標的を変えてもう一人の男へと伸びる。

回避行動を取ろうとするが、その行動を起こす事が出来ない。
神父の男が指を振るうと、武偵の男の身体が自然と巨大な腕の方へと赴く。


「殺す価値はない。けれど、此処で見られた事を見過ごす事も出来ませんしねぇ。何よりも、ヘーオスの腹の足し位にはなるでしょう。…エーリゲネーア、彼に裁きを」


その腕が男の身体を捕らえる。神父が藍色の髪の少女にそう無情に告げる。
少女が、淡い藍色の瞳で男を見た。ひどく物憂げにその瞳を伏せて、彼女は唇を震わせた。


「―――命令受諾」


灰白く輝く巨大な翼が、悪意を持つ獣の様に蠢いた。

夜の公園に、男の絶叫が響き渡る。


.
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ