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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十一話 暗雲(その2)
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駄目です」
「中将?」
「その件については既に私が元帥にお話ししました。残念ですが受け入れてもらえませんでした」

我々は皆顔を見合わせた。元帥とメルカッツ提督の関係が良くないことはわかっている。しかし、これは戦争なのだ。好き嫌いで済む話ではない。

「勘違いしないでください。元帥とメルカッツ提督の関係を邪推する人がいますが、それは違います。メルカッツ提督を拒否したのは理由があってのことです。私もそれに同意しました。」
理由が有る? それは、いやその前に確認する事がある。

「では、元帥は自分で指揮を取ると?」
「ええ」
私の問いにヴァレンシュタイン中将は短く答える。私たちはまた顔を見合わせた。

「しかし、発作が起きたら……」
「当然、指揮は取れんだろう」
「戦闘中に起きたらどうなる」
「最悪だな」
提督たちの間からささやきが漏れる。確かにそうだ、最悪の事態と言っていいだろう。

「指揮権を委譲した場合、序列から言うと指揮を執るのはミューゼル提督か……。ケスラー少将、ミューゼル大将はどうなのだ?」
ビッテンフェルト少将がたくましい腕を組んで問いかける。

「能力は問題ないだろうな」
「それなら問題はなかろう。違うか」
組んでいた腕を解いてビッテンフェルト少将は周囲に同意を求めた

同意するように頷く提督たちを止めたのはヴァレンシュタイン中将の声だった
「そうも行きません」
「?」

「ミューゼル提督が指揮を取ると言う事は、元帥が指揮を取れないことを意味します」
「?」
提督たちの表情に怪訝な色が浮かぶ。今更何を言っているのだろうと。

「そのことが兵にどんな影響を与えるか、私には想像もつきません」
「!」
部屋中にうめき声が満ちた。

確かにその通りだ、士気はガタ落ちに違いない。だが士気だけの問題で済むだろうか。ただの指揮官ではない。名将ミュッケンベルガーが指揮を取れないのだ。どんなパニックが起きるか、確かに想像がつかない。

「それに司令部が素直に指揮権を委譲するかどうか」
「……」
つぶやくように中将が続ける。私たちはその言葉にまた顔を見合わせた。

「兵を動揺させないためと称して指揮権を握り続ける事はありえます。戦闘前でも最悪である事は変わりません。司令部とミューゼル提督の間で指揮権をめぐって争いが起きるでしょう」

ありえない話ではない。いやむしろ有り過ぎる話だろう。
この場合、指揮権の委譲はあまりにも危険すぎるのだ。ミューゼル提督の能力とは関係ないところで危機が発生する。

「司令部で力を持っているのは……」
奥歯に物が挟まったような口調でファーレンハイトが問いかけてくる。彼は私の答えを判っているのだろう。

「シュターデン中将だ、ファーレンハ
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