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迷信
4部分:第四章
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第四章

「学者さんが言っていましたし。歯磨き粉は危ないって」
「ああ、あの雑誌ですか」
 歯医者は雑誌の名前を聞くとすぐに反応してきた。
「あの雑誌は駄目ですよ」
「駄目ですか」
「でまかせばかり書いてますから。あれを買ったら駄目だ、これを買ったら駄目だってしょっちゅう言っていますよね」
「はい」
「全部出鱈目なんですよ」
「けれど科学的根拠とか統計とか出して」
「詐欺師だってそうしますよ」
 歯医者の言葉はここでは辛辣だった。
「だってばれたら困るでしょ」
「そりゃ自分から詐欺師って言う人はいませんよね」
「そういうことです。その根拠とか統計も出鱈目ですから」
「そうだったんですか」
「そうですよ。批判する本も出ていますから」
 歯医者は真剣な顔で話した。
「よく勉強して下さいね」
「じゃあ歯磨き粉は」
「使った方がずっといいです」
 はっきりと言われてしまった。
「絶対に」
「そうだったんですか」
「消毒にもなりますし汚れも取れますし口臭も消えます」
「本当にあの話は」
「全く以て出鱈目です」
 まさにそうだと言い切ってこられた。
「そういう雑誌だと思って下さい」
「うわ・・・・・・」
「自然食とか。自然のままとかいいますね」
 そういう手の雑誌でよく言われることである。
「それはいつも正しいとは限りません」
「いつもそうではないですか」
「中には出鱈目なものもあります。携帯電話の電波がどうとか言ってそれを人類滅亡の序曲とか喚いている漫画がありましたね」
 ノストラダムスとかそうした存在がやたらと出てそのうえで人類滅亡だと喚く漫画である。狂人が騒いでいるギャグ漫画というのがその評価である。
「あれと同じですから」
「はあ」
「気をつけることです。健康だと言ってもそうではないこともあります」
 それが他ならぬ歯磨き粉の話だった。
「それは気をつけて下さい」
「よくわかりました。まずはその根拠もしっかりと調べてですね」
「何でも鵜呑みはいけません」
 歯医者はこうも話してきた。
「よく覚えていて下さい」
「わかりました」
 秀吉は溜息と共に頷いた。そしてまた歯磨き粉を使って歯を磨くようになった。しかも後で妻の典子からこう言われたのだった。
「えっ、そういう話があったの」
「そうよ。歯磨き粉を使って歯を磨いたらね」
「病気が治ったんだ」
「そうなのよ」
 こう夫に話していた。
「未開の部族の人達がね」
「それで治る病気もあるんだ」
「だから。歯は命よ」
 彼女もこんなことを話す。
「よく調べないとね」
「全くだね。健康が大事といっても」
 秀吉もここであらためて話す。
「何でも鵜呑みにしたら危ないね」
「そういうことよ」
 このことを
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