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小才子アルフ〜悪魔のようなあいつの一生〜
第一話 せめてあっさり転生させてくれ
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い存在として飛ばすという考えを変えるつもりはないようだった。
 「殊勝だな。その殊勝さに免じて命だけは助けてやろう。…物凄くろくでもない世界にとてつもなくろくでもない存在として飛ばしてくれる」
 「…修飾語つきかよ!!」
 「ついでにトン数も増えたぞ」
 「ばう」「がう」
 白黒ハチワレと同じく白黒で顔の下半分が竈に鼻を突っ込んだかのように黒いのと、妙に人間くさいハスキー二匹からやたら重そうなハンマーを受け取りながら、パスカルはにこやかに笑った。
 「ちょっと待て!無量大数ってそんなもん食らったら死んじまうだろーーーが!!」
 「なーーにをおっしゃるお兄さん。死ななくちゃ転生できないでしょうが!」
 青地に白抜きで『帝都直行』と書かれ宇宙戦艦のマークが描かれたのぼりを俺に渡し、ハンマーを振りかぶるパスカル。やばい。本気で殺す気だ。
 「魂抜き取るとか次元の穴に放り込むとかそういうやり方はないのか!」
 意地悪そうに笑いながら振り下ろされたパスカルの『無量大数』と書かれたこんぺいとうハンマーの一撃を俺はジャンプ一番、髪の毛三本を犠牲にしてかわしさらに二撃目三撃目…を転がって逃れると、床にできたクレーターの数々を満足そうに見つめるパスカルに猛然と抗議した。いくら外道の悪戯でも受け入れられる限度というものがある。これからろくでもない目にあわされるのだからせめて苦痛のない転生方法ぐらいは要求したい。用意してほしい。いや用意してしかるべきだ。だが悪魔のような外道は俺の怒りも切実な願いも意に介さず、あっさりと言ってのけた。
 「ない!昔から言うだろう?『加減 もちろん知りません』ってな」
 「それこそ知るかーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
 「ああうるさい。時間が惜しいからさっさと行け」
 逆上してグルグルパンチをぶちこもうとする俺の叫びをハンマーで軽く払いのけると、パスカルは何やら切符のようなものを俺に押しつけた。とたんに、足元の感覚が消失する。
 「うわあああああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
 …楽に転生させる方法持ってんじゃねーか!床に開いた穴からいずこかへと落ちて行きながら、俺は意識がなくなるまでひねくれた作者への抗議の叫びを上げ続けていた。
 俺が最後に見たのは切符の全面に大書きされた『ハズレ』の文字だった。

 『私は切っ先。お前に鋭き剣先を授けよう』
 『私は刃。お前に斬り払う刃を授けよう』
 『汝は地の上を歩き、宇宙を飛翔する』
 『汝は神と剣の後継なり。疾風の後継は友』
 『汝トラムトリストの肉を貫き背に斬りつける運命に抗ってみよ』
 どこからともなく、歌うような唱えるような声が聞こえる。 
 「よりによって、小才子とはな」
 声が遠のき意識が戻ると、俺は裏切り者になっていた。

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