Side Story
少女怪盗と仮面の神父 13
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はい、なんでしょう?」
「私、アリア信仰なんか本気でどうでもいいんです。でも、教会の内部には興味がある。だから先日私にくれた自由を先に行使させてくれませんか? そしたら、この先も協力を約束します。宗教なんて気にしたこともないし、どれだけ力になれるかは未知数ですけど」
お勉強上等。
お説教もどんと来い。
ただし、その前に褒美を寄越せ。
アリア信仰への勧誘は散々断った。
それでもと押し切ったのはアーレスト側だ。
なら、これくらいは許されても良いだろう。
(てか、断られたら本気で困る。時間が無いのよ、私には!)
首を傾けてじっとミートリッテを見ていたアーレストは
「……はい。それで変えられるものもあるでしょうから、止めはしません。私はしばらく外に居ます。この鍵が開ける場所なら、お好きにどうぞ」
首に下げていた鍵付きのネックレスを外し、ミートリッテに手渡した。
銀色の細い鎖が、ちゃり……と鳴る。
「監視、してなくて良いんですか?」
厳密にはまだ部外者である子供を、あっさり受け入れた神父は
「何故、そんな必要が? 貴女の音は綺麗で心地好いのに」
意味不明な言葉と共に、どこまでも透明な笑顔を返した。
しかし。
(……なんだろう。顔色が悪い?)
家まで強引に押しかけてきた時と比べて、覇気が感じられない。
てっきり有無を言わせず着席させられるかと思っていたミートリッテは、思わず彼の額に右手のひらを押し当て、金色の虹彩を覗き込んでしまった。
「ミートリッテさん?」
驚くアーレストの声にも退かず、自分の額にも反対の手を当ててみる。
「熱はない、かな。けど、風邪を引きかけてるのかも。風に当たりすぎないほうが良いですよ。王都ではどうなのか知りませんけど、ネアウィックでは基礎体力で勝負が基本なんです。薬は一応ありますが、優秀なお医者様には期待しないでくださいね。どうぞお大事に。では、お邪魔してきます」
海岸で拾われた時はハウィスに看病してもらったなあ……。
などと思い出を振り返りながら、小刻みに瞬きをくり返すアーレストへ、にっこりと笑って一礼し、背を向けた。
だから、ミートリッテは知らない。
彼が、あの時と同じ……
今にも泣き出しそうな微笑みを浮かべて、うつむいたことを。
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