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目薬
2部分:第二章
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第二章

「青森弁になるとか?」
「そげんなるかも知れんでごわすな」
「じゃあさ、今その目薬持ってる?」
 響は真面目な顔で問うた。
「その目薬」
「はい、これでごわす」
 すぐにだ。麻里子のその長い手から目薬が差し出されてきた。
 響はそれを受け取ってだ。早速目に入れてみた。すると。
「こんでそんな凄いことになったらびっくりするだ」
 濁音が明らかに多くなっていた。
「確かにおらんとこは青森の津軽だ。そんでも」
「いや、なってますよ」
 隣にいる名古屋出身の男の後輩が突っ込みを入れた。
「津軽出身にしてはインパクト弱いですけれど」
「流石に太宰みたいにはいかないだ。あれは本当に凄い濁音だったと聞いてるだ」
「ううん、じゃあ僕もそうなのかな」
「してみます?」
 彼も麻里子に言われた。
「目薬」
「貸してくれる?それじゃあ」
「はい、どうぞ」
 実際にしてみるとだった。彼もであった。
「さて、話し方はどうなったみゃのう」
「なってるでごわすよ」
「ああ、ほんまだぎゃ」
 しっかりと名古屋弁になっていた。そしてそれぞれの方言が出るとだ。皆かなり性格があけっぴろげになっていたのだった。そこにこの場所の責任者である佐野チーフがやって来た、彼女は広島出身である。
「野村と大野は選手時代はよかったんですが」
「ははは、阪神も苦しめられたよ」
 眼鏡の中年の大阪出身の部長と話しながら仕事場に来ている。
「随分とね」
「けれど今は違いますよね」
「昔はねえ。阪神は弱かったから」
 こんなことを言う部長だった。飄々とした感じの人物だ。スーツの着こなしが如何にもサラリーマン然としていて歩き方もそうなっている。
「広島にはねえ」
「今の野村と大野どう思います?」
「根性論に走り過ぎじゃないかな」
 こう佐野チーフに返す。チーフは三十代の半ばの外見は知的な美女である。
「やっぱり」
「そうですか」
「広島の伝統だろうね、あれは」
 部長は淡々と話す。
「猛練習と根性はね」
「そのせいで怪我人や故障者も多いんでしょうか」
「そうじゃないかな」
 部長はここでも淡々としていた。
「過ぎたるは及ばざるが如しってね」
「難しい話ですね」
「仕事だってそうだよ。無理は禁物だよ」
 部長はここで仕事の話も入れた。
「勤勉なのはいいけれどね」
「そうですね、それは本当に」
「程々にしないとね。広島は練習のし過ぎなところがあるから」
「困ったことです」
 こんな話をしながら仕事場に入る。するとそこは方言だらけだった。佐野はその有様を見てまずは目を顰めさせたのであった。
 そしてそのうえでだ。麻里子達に問う。
「何かあったの?」
「あのCMの目薬を使ったでわすが」
「そうなって
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