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目薬
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第一章

                          目薬
「これであなたも変われます!」
 最近巷でこんなCMが流れていた。
「目薬をするだけで!それだけで理想のあなたになれます!」
「そうなの?」
 それを聞いてだ。幣原麻里子は思わず画面を見てしまった。
 麻里子は背が高くはっきりとした顔をしている。髪は茶色をかけてショートヘアにしている。少し日本人離れした感じの顔に長身に相応しい見事なプロポーションをしている。手足も実に長い。その彼女が今そのテレビのCMを見て呟いていた。鹿児島出身である。
「それで変われるんなら」
 いいと思ったりもした。実は彼女は外見は派手だが中身は実に引っ込み思案なのだ。それで鹿児島出身だというのに気の弱い性格をいつも気にしているのである。
 それでそのCMを見てだ。心を動かされた。
「それなら」
 それでだと思ってだ。すぐに薬局に向かった。そこであの目薬を注文した。
「あの・・・・・・」
「はい、何でしょうか」
「あの目薬下さい」
 こう、まるで蚊が鳴く様な声で言う。
「CMの目薬を」
「あの目に入れたら変われるってやつですね」
「はい、それです」
 まさにそれだというのである。
「それ、下さい」
「わかりました、はいこれですね」
 店の若い店員はすぐにその目薬を出してきたのだった。それは普通の緑の透明なプラスチックのケースに入った目薬であった。
「最近売れてるんですよ、これ」
「そうなんですか」
「CMのお陰ですね」
 それのせいだというのだった。
「それで」
「成程、それでなんですか」
「売れてますよ。はいどうぞ」
「それじゃあ」
 お金を出してそのうえで買った。そうして次の日会社に来てからすぐに目薬をかけてみた。それから仕事場に向かった。
 仕事は普通の会社である。大きな会社と言えば大きな会社だ。そこのスペイン食品部門で働いているのである。評判は決して悪くない。
 それで今日もその仕事場に入った。その第一声は。
「おはようでごわす」
「ごわす?」
 既に出社している青森出身の男の先輩がだ。不意に眉を顰めさせた。
「何、今の言葉」
「鹿児島弁?」
「うちに鹿児島の人いたっけ」
「あれ、そういえば」
 ここでだ。その出社してきた麻里子を見る。そのうえで言うのだった。
「まさか幣原さん?今行ったの」
「ごわすって」
「鹿児島出身って聞いたけれど」
「その通りでごわすよ」
 まさにそうだと。その鹿児島弁で返すのだった。
「それが悪かとですか?」
「酒、飲んでないよな」
 長野出身のその響先輩は思わず問い返した。
「朝から」
「私朝からそんな破廉恥なことしないでごわすよ」
「じゃあ何で鹿児島弁なの?」
「自然とこ
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