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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十二話  悪名
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、レベロ。君達はごねて帝国の譲歩を勝ち取ろうとしているのかもしれんが……』
「そんなつもりは無い。いくらなんでもルドルフの誕生日が祝日にならないとは思っていない。だが議会が五月蠅いんだ。もう少し時間が欲しい」
私が答えるとトリューニヒトが“何も分かっていない”と首を横に振った。

『帝国は来年から新しい暦を使いたいと考えていた。フェザーンに遷都し新帝国成立を宣言する。分かるだろう、新しい国家に新しい帝都、新しい暦。全宇宙に新たな時代が来たと宣言するつもりだったんだ。それを君達がぶち壊した。帝国は新暦は再来年からの使用になると諦めている』
「……」

『気付かなかった等と言うなよ。帝国はスケジュールを公表していたんだからな。君達は当然気付くべきだったんだ。もし気付かなかったのだとすれば君達は自分達の立場を、自由惑星同盟が帝国の保護国なのだという事を理解していない。余りにも無神経過ぎるぞ』
「……」

『以前話した事が有るな。同盟政府には二人の主人が居ると。一人は同盟市民、そしてもう一人は帝国だ。その事を君達は忘れていないか?』
「そういうつもりは無いが……、同盟の内情を優先しすぎた、帝国との関係を疎かにしたという部分は有るかもしれない」
内心忸怩たるものが有った。ヴァレンシュタイン元帥が帝国に去った事で多少帝国を軽視したかもしれない。トリューニヒトがまた大きく息を吐いた。

『この件を進めているのはヴァレンシュタイン元帥だ。君達は見事に彼の顔を潰した』
「そんなつもりは本当になかったんだ、トリューニヒト。そうだろう、ホアン」
「ああ」
『だったらきちんと認識すべきだ。君達は彼の顔を潰したとね』
怒っている。或いはトリューニヒトはヴァレンシュタイン元帥から叱責されたのかもしれない。

『君達がどれ程嫌おうと彼は帝国最大の実力者なんだ。おそらくここ数年のうちに政治家に転身しリヒテンラーデ侯の後任者になるだろうと言われている。そうなれば名実共に帝国の第一人者だ』
「……」
『そして彼ほど同盟を、民主共和政を理解している人間は帝国に居ない。彼は君達の最大の理解者であり庇護者なんだ。その彼の顔を潰して如何する? 改めて市民に主権など不要だと確信させただけだ』
「……」

言葉が出なかった。ヴァレンシュタイン元帥は最大の理解者であり庇護者。トリューニヒトの言う通りだ。だが何処かで彼を敵視していたかもしれない。彼を無視しようとしたかもしれない。彼を困らせる事を望んでいたのかもしれない。だから交渉を引き延ばした……。有り得ないとは断言出来なかった。

『帝国の改革派の殆どが彼のシンパだ。彼らは民主共和政に好意を持っているが君達がヴァレンシュタイン元帥の顔を潰し続けるならば間違いなく民主共和政から顔を背けるだろう。帝国最大の
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