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八神家の養父切嗣
四十五話:王の翼
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新たな英雄を創り上げる必要がある。くれぐれもしくじるでないぞ」
「無論。常に余裕をもって優雅であれば失敗などあり得んよ」

 ポッドの中に浮かぶ脳味噌に向かい一人の男性が語る。先端に宝石の付いたステッキのようなデバイスを持ち、完璧に整えられた身だしなみ。その姿は一言でいえば優雅。付け入る隙など存在せず自信に満ち溢れている。誰もがその男前に跪き従いたいと思うようなオーラが彼にはあった。

「では、頼んだぞ。我らが友よ」
「我らの悲願を叶えてくれ」
「勿論、世界が平和になったあかつきには祝杯でも挙げよう」

 男は親愛の念を込め上品に微笑みながら盟友に背を向ける。願望の器を手にし、自らの願いを叶える為にゆりかごの下に歩き出す。後顧の憂いなど何もない。全ては順調である。だがらこそ、男は気づけなかった。自分の後ろ姿を敬礼して見送っている生命維持係の女性の顔が、本性を現すように残忍に歪んでいることに。





 巨大なものを見た時、人はまずどのような感情を抱くであろうか。大人であればその壮大さに胸を打たれるかもしれない。作り手を思い、ただ感心するかもしれない。しかし、それは大人が自分の身は安全だと知っているからである。巨大な建造物を見ても襲い掛かってくるとは思わないし、大型犬を見ても可愛いと思うだけだろう。

 それらは全て害はないと知っているから。では、子どもは、つまり人間の原初の姿であればどう思うのだろうか。幼児は自分よりも大きい犬を見れば初めは泣く。親以外の大人を見ればその大きさに怯えて近寄らない。成長するにつれそれらが敵でないと知り近づくようになる。人の本能は知らないもの、理解できないものを恐れる。

 そして、巨大なものを見る時もまた―――人は恐怖する。

「古代ベルカに伝わる伝説のロストロギア……『聖王のゆりかご』こないな隠し玉をまだ持っとったんか」
【はやて! ごめんなさい。これは聖王教会の……いいえ、私の責任です】
「カリムのせいやない。普通は誰もこんなおとぎ話みたいな船信じんよ」

 アースラの中からでもはっきりと肉眼で確認できる程の巨体を誇るゆりかごを見ながら呟くはやて。ただそこに浮いているというだけで多くのものが畏怖し、恐怖してしまうだろう。そんなことを考えているところにカリムから急ぎ通信が届く。話の内容としては自身の予言の解釈が間違っていたために止めることが出来なかった。

 また、聖王のゆりかごという本来であれば聖王協会が管理しなければならないものが敵の手に渡っていたという事実への謝罪だ。しかしながらはやては分かる方がおかしいと逆にカリムを慰める。そして同時に事態は聖王教会の重鎮であるカリムが簡単に頭を下げなければならない程余裕のない状態なのだと改めて理解し、対応策を頭の中で張り巡らせる
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