第九話 戸惑う心その十二
[8]前話 [2]次話
「姉さんは弱いわ」
「そうなの?」
「ええ、そうよ」
「そうは思えないけれど」
「人は誰でも弱いのよ」
「僕も姉さんも」
「そうよ、人は弱いものよ」
そうだというのだ。
「このことは自覚することよ」
「強いものじゃないんだね」
「だから迷って悩んで苦しむのよ」
「誰でも」
「そう、それに大小はあってもね」
それでもというのだ。
「弱いのよ」
「ううん、弱いんだ」
「そしてその弱さをね」
それをというのだ。
「自覚してこそよ、それからなのよ」
「弱いって自覚して」
「何かが出来るのだと思うわ」
「人は」
「そう、太宰治だったからしら」
昭和の、それこそ殆どの者が知っている小説家だ。走れメロスや富嶽百景等が有名だ。
「その弱さを自覚するからこそ優しくなれる」
「そういうものなんだね」
「そして何かが出来る様になるのよ」
「弱いってことよ」
「そうなんだ」
「だからね」
それで、というのだ。
「私は自分が弱いってね」
「自覚しているんだ」
「人は弱いものとね」
そうも言ったのだった。
「確信しているわ」
「じゃあ僕も」
「弱いって思っていて、そして」
「そして?」
「弱いことは恥ずかしくないことよ」
弟のその目を見ての言葉だ。
「全くね」
「恥ずかしくないんだね」
「当然のことだから」
「人として」
「そう、だからね」
「その弱さを自覚してなんだ」
「龍馬君に対して言うべきかも考えてね」
優花の目を見たままだ、そのうえでの言葉だった。
「いいわね」
「そうすればいいんだね」
「そして龍馬君も人だから」
「弱いんだね」
「誰でもよ」
人間ならというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ