巻ノ四十 加賀の道その十一
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「だからな」
「それで、ですな」
「羽柴家にはですな」
「入られぬ」
「そうなのですな」
「そうじゃ」
まさにという返事だった。
「だから安心せよ、拙者は羽柴家には入らぬしじゃ」
「あくまで義をですな」
「義を求められる」
「それだけですな」
「御主達もそれでよいか」
幸村はあらためてだ、十勇士達に問うた。
「拙者と共にいても冨貴は得られぬがな」
「ははは、その様なものはです」
「我等も興味がありませぬ」
「殿と共にいたいだけです」
「殿とお会いした時からそれは変わりませぬ」
十勇士達は幸村に笑って応えて言った。
「ですから」
「そうしたものはです」
「我等も興味がありませぬ」
「だからです」
「殿と共にです」
「火の中水の中です」
「真田家にいさせてもらいます」
「殿のお家に」
「そう言ってくれるか、では拙者は関白様に申し上げる」
秀吉と会う時になってもというのだ。
「確かにな」
「ですか、わかりました」
「流石は殿です」
「我等の主です」
「そう言ってくれるか、ではな」
「はい、上洛していきましょう」
「これからも」
「近江に入りな」
そしてというのだ。
「それからじゃ」
「都ですな」
「またあそこに行きますな」
「それがです」
「楽しみです」
「うむ、あの時から数年経った」
幸村もこのことは微笑んで言う。
「果たしてどうなっておるか」
「前よりも栄えておるでしょうな」
「関白様の政も確かとか」
「それではです」
まさにというのだ。
「あの時以上にです」
「よくなり」
「栄えているでしょうな」
「それを見ようぞ」
このことは笑顔で言ってだ、そして。
幸村主従は上杉家の者達と共に都に向かっていっていた、秀吉は確かに彼等には手出しをしなかった。
だがその北陸の要地である敦賀を治める大谷吉継から報を聞いてだ、笑みを浮かべていた。
「そうか、真田幸村はか」
「忍達が見ていますが」
大谷が向けただ、大谷は丸い顔をしている。その大きな髷が目立つ。
「その気は尋常なものではありませぬ」
「まさに天下の傑物か」
「まだ若いですが」
「そう言っていい者じゃな」
「間違いなく」
「そうか、わしも見て見たいのう」
秀吉は大坂城においてだ、笑って言った。
「早くな」
「まさかと思いますが」
「都にこっそりと入ってか」
「そうお考えですか」
「前ならそれが出来たがのう」
笑いながらも残念そうにだ、秀吉は大谷に答えた。
「それを御主達が許すか」
「いえ」
一言でだ、大谷は答えを返した。
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