90話 仇討
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不気味に蠢く球体。空中に浮かぶそれは液体のようで、下から見ているだけでもそれはどろりとしているように見えて気味が悪い。赤みがかった色のその中に、憎き仇であり、呪いの根源であり、何人も殺した殺人者は収まっていた。初めて会った時と変わらぬ不気味な道化師の衣装はそのままで、ただ醸しだされる雰囲気だけが凶悪さを増し、一層不気味さを掻き立てていた。
ドルマゲス。大国トロデーンの国宝の杖を盗み、茨の呪いでほんの一部を例外に国中を眠らせた大罪人。自らの師匠、ゼシカの兄、ククールの恩人で親代わりのようなオディロを殺した悪人。それ以外にもリーザス地方とトラペッタ地方を繋ぐ関所の兵士を殺し、オセアーノンを狂わせたように把握できていない罪の多数あるだろうとされている。ギャリングの部下が来ているということはギャリングの死はドルマゲスによるものだと簡単に推測できた。
扉を開き、武器をめいめい構えて突入した五人はそれぞれ胸のうちに押さえ込んでいた感情をぶつけ、彼を討たんといきり立った。
先頭にいるのはエルト。リーダーにしてトロデーンの兵士。故郷は分からぬものの、育った城を、育ての親い等しい者たちを呪いの深い眠りにつかせ、主君を痛ましい姿に変えられたことは許せることではない。槍を構え、しかし同時に魔法を唱えられるように油断なく構える姿はまさに勇者というところだろう。厳しい表情に普段の温厚な青年は鳴りを潜めていた。
その半歩ほど後ろでその背ほどもある大剣を抜き放っているのはトウカ。同じくトロデーンの兵士。守ってきた国を、育ての両親を呪われた恨みに加え、王族の守護の使命を今果さんと正義感と半ば狂ったほどの闘争心を剥き出しにして薄らと笑ってさえいた。両手で剣を構えているものの腰には二本の剣が、手袋には封じられた大量の武器が、まとった服には数多の刃が仕込まれていてどんな体勢、状況になろうとも攻撃を仕掛けるだろう。
後ろの非前衛を守る如く構えるヤンガスは鋭く研がれた斧を構え、ここにいる者たちと違ってドルマゲスに個人的な恨みこそないが同じように覚悟を決めて睨みつけていた。命の恩人である二人、今度こそ真っ当な人間として生きようとする想い、そうでなくても本来人情に厚い彼は仲間たちを見捨てることをしないだろう。その激しい戦闘に耐えぬいた体、精神でこの敵を討たんとそこにいた。
ゼシカ。誰よりも仇討ちの気持ちの強い少女だった。信頼し、敬愛し、慕っていた兄を突然殺された悲しみ、怒り、憎しみは彼女の持っていた魔女としての才能を引き出し、磨き上げた。それは復讐という何も生まないことへ向けられたことであり。しかし彼女は心を曇らせること無くここまでたどり着いたのだ。幾多の魔物を燃やし尽くしても消えることのなかった復讐心は今、果たされようとしていた。
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