第九話 戸惑う心その六
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「いや、むしろ風邪だったらな」
「普段以上にだね」
「栄養摂らないといけないだろ」
「その通りだよね」
「だったらな」
「飲むだけでも」
「飲め」
こう言うのだった。
「いいな」
「そうするよ」
「本当に顔色悪いな」
龍馬は優花のその顔を見て言った。
「表情もな」
「そうなんだ」
「風邪、相当に悪いんだな」
「碌に寝られなかったし」
このこともだ、優花は言った。
「昨日は」
「昨日優子さんと動物園とか行ったんだよな」
昨日、即ち日曜のことをだ。龍馬は尋ねた。
「そうだよね」
「うん、楽しかったよ」
「その時ではしゃいで夜も遅くまで飲んでたのか?」
龍馬は首を傾げさせてだ、また優花に問うた。
「それでか?」
「まあちょっと」
「御前にしては珍しいな」
規則正しい生活の優花にしてはというのだ。
「それはな」
「まあちょっとね」
「しっかりしろよ。じゃあ昼はな」
「食欲がなくても」
「ちゃんと栄養は摂れよ」
「そうしないと駄目だね」
「野菜ジュースなりポカリスエットなりな」
そうしたものをというのだ。
「しっかりと飲めよ」
「そうするよ」
「あとな」
さらにだった、龍馬は優花に言った。
「困ってたら俺に言えよ」
「何でもだね」
「ああ、何でもするからな」
そうして優花を助けるというのだ。
「だからな」
「龍馬にだね」
「頼れよ、優子さんもいてな」
そしてというのだ。
「俺もいるからな」
「龍馬をだね」
「いいな、わかったな」
「そうだね、信じていいんだよね」
「?当たり前だろ」
優花の今の言葉にはだ、龍馬は。
違和感、普段の彼とは違うそれを感じてだ。すぐにこう返した。
「そんなことは」
「龍馬は」
「俺が誰かに嘘言ったり騙したり裏切ったりしたことがあるか」
「いや、ないよ」
「御前には特にな」
「僕が友達だからだね」
「ずっと一緒のな」
それだからこそというのだ。
「だからな」
「そうしたことはだね」
「ああ、しない」
絶対にと言うのだった、彼も。
「したら終わりだからな」
「終わりって」
「人としてな」
「嘘を言ったり裏切ったりしたら」
「人として終わりだからな」
そう考えているこそだというのだ。
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