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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十六話 敵、味方
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イエンタールに噂を流させるとは思っていなかった、間抜けな話だ。
リヒテンラーデ侯に心当たりを聞かれたときは咄嗟にフェザーンと言ったが、内心では八割がたラインハルトだろうと思った。フェザーンが後ろで糸を引いているなら、あんな場所では襲わせない。あそこは貴族の邸宅が集まっているから邪魔の入る可能性が高い。もっと確実に殺せる場所、人気の無い場所を選定するはずだ。
ラインハルト達が本気で俺を殺そうと考えたとは思っていない。多分ベーネミュンデ侯爵夫人の目を伯爵夫人から他の誰かに移すのが目的だろう。俺を利用したのは、“皇帝の闇の左手”という噂と貴族嫌いという実績があったから効果的だと思っただけだろう。ケスラーにも言ったが俺の鼻を明かしたいという稚気も有ったに違いない。
襲撃事件があったと聞いて一番驚いたのは彼らだろう。とんでもない事になったと思ったはずだ。だが謝罪する事は出来ないと直ぐ判断しただろう。俺を信用しきれていないし、一つ間違うと伯爵夫人にまで累は及ぶ。原作ではベーネミュンデ侯爵夫人を上手く排除できているが、あれはブラウンシュバイク公達がラインハルトを歯牙にかけていなかったせいだ。
しかしこの世界はどうだろう? 彼らは原作ほど強固な地位を得ていない。此処最近、俺やリヒテンラーデ侯、ミュッケンベルガー、エーレンベルク両元帥に押さえ込まれ不安感を持っているはずだ。ラインハルトの排除に動く可能性は高いと思う。俺がラインハルトに動くなと言ったのもこの可能性が有るからだ。それを全く無視しやがって、あの阿呆。
起こってしまったことをいまさら考えても仕方が無い。問題はこれからだ。俺がどうすべきかだが、道は三つ有る。
1.ラインハルトから離れ独立する。
2.何事も無かったとして、ラインハルトと共に行動する。
3.ミュッケンベルガー、リヒテンラーデ連合を成立させその中で行動する。
1だが、現状では難しいだろう。理由は俺が戦場に出る事が出来ないからだ。当然昇進も無い。つまり俺は当分の間、その他大勢いる中将の一人だ。勢力を持つなんて出来そうに無い。
一方ラインハルトは昇進する可能性はかなり高い。元帥はともかく上級大将は楽にいくだろう。これではどうにもならない。特に独立する以上ラインハルトとは決別する事になる。彼にとっては俺を潰すチャンスだ。大喜びに違いない。
2だが、一番いいのはこれだ。門閥貴族たちを潰せる可能性は一番高い。しかし問題は俺とラインハルトの関係が修復可能とは思えないことだ。向こうは俺にかなり不満を持っているようだし、今回の件で負い目も持っている。いずれその負い目が憎悪に変わらないという保障はどこにも無い。
こっちもいい加減愛想が尽きた。欠点があるのは判っている、人間的に未熟なのもだ。しかし結局のところ原作で得た
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