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水の国の王は転生者
第二十八話 魅惑の妖精亭にて
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に、もちろんルイズ本人にも」

「御意」

 ワルド夫人は一礼して執務室を退室した。

(どうしようか、大隆起を止める鍵になる虚無。その使い手の可能性のあるルイズを保護すべきか……う〜ん)

 ルイズを手元に置くべきか、何よりワルド夫人の言葉を信じるか、散々悩むと、カトレアへの返事にルイズが虚無の使い手である事を匂わせる様に書いた。勘の鋭いカトレアなら気付くだろう。それと、ルイズの事を色々フォローするように付け加えた。
 返事を書き終わると無意識に窓から空を見上げた。

「虚無かぁ……はぁ、今のオレには虚無よりもカトレアだよ」

 手紙のやり取りはしていても、もう1年以上も会ってない。
 時間が空くと、空を見ながら溜め息をつく回数と比例して、酒量も多くなり家臣たちを心配させていた。








                      ☆        ☆        ☆






 数週間後、以前から計画されていた、トリスタニアの大掃除が決行された。

 最初に目を付けられたのは、裏通りのチクトンネ街。
 多数の酒場や賭博場に、たむろするヤクザ者を次々と取り締まり、他にも無届の娼館、ご禁制の秘薬を売る露天商等々を摘発していった。
 また、ホームレスといった者達もターゲットにされた。

 特に無届の娼館は、安く女を抱かせてくれる為、労働者には好評だったが、軒並み潰されてしまい一部の労働者から怨嗟の声が上がった。
 娼館で働いていた女達は、故郷に帰すか別の働き口を紹介した。

 この大掃除でヤクザ者と裏で繋がっていた不貞貴族も、ある程度摘発する事ができたが、ほとんどは脇の甘い連中ばかりで、大物を釣り上げる事は出来なかった。
 ちなみに捕まったヤクザ者やホームレスは、労働力として北部開発区の人足寄せ場に放り込まれた。
 人足寄せ場とは、犯罪者などを社会復帰させるために職業訓練を行う場所だ。

 少量の血が流れる事を覚悟していたが、その様な事は起こらず、結果的に、ヤクザ者や一部の不貞貴族を排除した事で、トリスタニアのアンダーグランドは人畜無害な連中ばかりになった。
 一方、民衆の反応はいうと、ヤクザ者と手を組んで儲けていた者も居たし、少々苛烈だった為か評価は半々だった。

 ともかく、不貞貴族の手足となる者たちは排除された。

 ……

 この日、マクシミリアンはチクトンネ街にある大衆酒場兼宿場『魅惑の妖精』亭の前に居た。
 この時はまだ『大掃除』の真っ最中で、市民に扮した密偵団員が秘密警察宜しくトリスタニア市内を歩き回っていた。

 マクシミリアンは『水化』の魔法を応用して、何処にでもいる様な普通の青年に姿を変えていた。

 何故、この様な所に
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