プロローグ 平和な日常
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吹き抜ける風が体に当たり,思わず身震いしてしまう。
秋と冬の移り変わりが始まったばかりのこの時期,まだ木にもきれいな赤色の葉が残っている。
今日はいささか寒すぎるような気がする。
天気予報ではそれほど気温が下がるとは言ってなかった気がするのに。
思わず身震いをする。
母親に勧め,というより半強制的な説得により学校で朝早くから勉強をすることが日課になっており,憂鬱ながらも学校の授業が始まる一時間ほど早く登校しているせいか,この時間帯はまだ太陽も完全には昇っておらず,辺りは薄暗い。
周りの薄暗さのせいで,朝から低いテンションが更に低くなるように感じる。
自分でも,夜遅くまで勉強するよりも,朝早くに起きて勉強をする報が効率がよく,健康にも良いとは理解できるが,釈然としない。
再度,風が吹き抜けて,カッターシャツの上にカーディガンを重ね着しているだけの体が冷える。
今日は学ランを羽織ってきたら良かったかな,と後悔するが,学ランを家に取りに帰って母親に小言をもらうのも面倒なので寒さを我慢して学校まで歩くことにする。
歩き慣れた通学路を歩くこと20分,地元の私立中学に到着する。
都内でも有数の進学校で,中学受験も恐ろしい倍率の競争だ。
学内の偏差値も圧倒的で,そこいらの中学校で学年トップクラスの成績を取っている者でも,この学校では順位が半分を下回る,なんてこともある。
授業が始まる1時間前に学校にき来ているような者は少なく,グラウンドのほうで運動部の朝練をする音が聞こえるだけだ。
大きな声でかけ声を上げる音や、野球のバットでボールを打つ甲高い音が聞こえる。
部活には入っていない。
スポーツに興味を持っていないわけではないが、母親に時間の無駄だと言われて帰宅部を選択させられた。
少しだけ朝練をしている人たちのことを羨ましく思いながら、2年半以上通い続けた学校の敷地を歩く。
施設の充実した私立中学なので校舎もきれいなものだが、2年以上通い続けたら憧憬もなにもない。
そのまま三年生の校舎の下駄箱へと向かう。
何の気無しに自分の下駄箱を開けると、上靴の上に一枚の手紙、俗に言うラブレターが置かれていた。
上靴を取る前にその紙切れをひょいっと掴んで裏面を見る。
そこにはご丁寧に名前の他にも学年、クラスまで書かれており、一年生の女子生徒であることが分かった。もちろんその女子の顔など知るわけもない。
盛大にため息をつく。
朝から低いテンションがもう一段階下がる。
「朝からため息付いていると、運が逃げていくぞ」
「いいんだよ。すでに今日の俺の運はゼロであることが判明しているから問題ない」
後ろから掛かる声に、相手が分かっているので振り向きながらぶっきらぼうに答える。
最近、口調が悪くなっていたことを母
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