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SAO−銀ノ月−
第百六話
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ってしまう。何がおかしいのよ――と赤い服で自らの朱に染まった頬を紛らわせながら、上目づかいでこちらを見上げてくるリズに言い放つ。

「リズは何を着ても似合ってるよ」

「もう! ……大丈夫?」

「ちょっと待ってくれ精神的にキツい」

 決め台詞のようなものに精神的ダメージが加えられ、その場に膝からくずおれる。リズは心配しながらも試着室に入っていき、ようやく少し休憩出来る――と息を整えていたが、女性用の服売り場で一人待機する、というこのシチュエーションはシチュエーションでキツいものがある。かつ試着室の前ということで完全に不審者で、気晴らしに台本をペラペラと捲る。

「試着室から出て来た彼女を褒めるのは、最高のアピールポイント☆ ねぇ……」

 とてつもなくこの台本を大地に叩きつけた後に斬り裂きたくなる衝動に駆られたが、何とか我慢して再び懐にしまうことに成功する。あと一秒でも直視していたら危なかった――などと思っていた時、目の前の試着室のカーテンが開かれた。次の台詞は何だったかな、と思いながらそちらを向くと――

「ど、どう?」

 普段のエプロン姿とは違った、とてもゲーム内の格好だとは思えない赤いセーター姿。そしてついつい視線がピンク色のスカートから覗く、健康的な肌色の足へと向いてしまうが、それは自制心で何とか耐える。薄く朱色に染まった頬が彩りを加える表情に、その視線はこちらを直視しないようにどこかを向いている。

「……ちょっと、台詞台詞。ちょっと! ……ただ見られる方が恥ずかしいでしょうが、バカ!」


『ありがとうございましたー!』

 そんなこんなでその服を購入したリズと連れ添って――ようやくこの歩き方にも慣れてきた――店を出ると、素早く台本をチェックしていく。一応は全部チェックして台詞は覚えているものの、気づけば頭が自然と記憶を削除してしまうので、定期的な確認が望ましいからだ。そして、次なるシチュエーションに刻まれた文言は。

「ライバル登場……?」

「ショウキくん! リズ!」

 そんな明るい声が聞こえてきた瞬間に、反射的に台本を懐にしまい込む。知り合いにでも見られたら厄介だ――と思ったが、もはや台本とかいう問題ではないことに気づくのは、そのすぐ一瞬後のことだった。しかしてリズがすぐさま俺との密着状態から離れており、何とか面目が保たれる状態となっていた。

「レイン?」

「うん、レインちゃんだよーひさびさ……って、リズ! その服可愛いね!」

 久しぶりに会ったような気がする彼女は、こちらに笑いかけながら手を振っていたが――リズの格好を見てテンションが上がったようで、様々な角度からリズを見ていた。周囲はカップルらしいプレイヤーが多かったが、彼女はどうやら一人なようで。

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