第百六話
[3/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
であるルクス目線からすれば、感極まったものに違いない。
「ファン冥利に尽きるわねぇルクスも。……そういえば、ショウキはどうして貰ったの?」
「あー……偶然、会ったんだ」
本当はユウキとセブンへの水泳授業の時にチケットは貰い、リズやキリト達に渡してもらうように頼まれたわけだが。あの水泳授業の件は二人の教え子の名誉に関わるので、三人の秘密として粛々と処理されるべきだ。
「ふーん、まあいいわ。それよりルクスは何か用?」
「えっと、その……お客様の紹介なんだけど」
そんなこちらの事情にリズがどう思ったかは分からないが、興味なさげにルクスに用件を聞く。見たところ武器が傷ついたように見えない彼女は、少し言い辛そうにしながらも、チラリと店の外側を見た。
「お邪魔するわよ」
「……アシュレイさん?」
ルクスが目線を向けていた方向から、長身の青年が姿を現した。いや、男装の麗人というべきか――とにかくイマイチ性別ははっきりしないが、俺たちと同じようにレプラコーンの《アシュレイ》というプレイヤーだった。かつてあの浮遊城で、最も早く裁縫スキルを極めてカリスマ――というのを、俺はこのALOになってから知って、実際には件の水着コンテストの時に知り合ったが。
「こんにちは。リズベット、ショウキ。前から伺いたいと思ってたから、ルクスに案内してもらったの」
せっかくだから何か買っていこうかしら――などとうそぶきながら、アシュレイさんは腕を組みながら店内に入ってきた。注意深く何も見逃さないとばかりに、店内のあらゆるところを物色するアシュレイさんに、こちらからゆっくりと歩み寄る。
「これなんてどうです?」
「あら、かっこいいじゃない。いただこうかしら」
「……早いわね……」
武器として使うのが目的ではなく、現実ならば神社に奉納するような、白木の鞘で作られた日本刀。古来より魔除けの意味が込められてきたソレを、アシュレイさんは知ってか知らずかお買い求めになる。
「それでアシュレイさん。ウチに何か用です?」
同じ生産職のプレイヤーであるアシュレイさんに、この武具店に来るような用事は特にない筈だが。不思議に思ったリズの質問に対し、アシュレイさんは意味深に微笑んでいた。
「それが最近スランプでねぇ……何か新しい刺激はないかしら、ってねぇ」
「スランプ、ですか……」
紡いだ言葉の内容に反して、あまり困っていなさそうなアシュレイさんの代わりに、リズが深刻な表情で頷いた。職人プレイヤーにとってスランプとは最大の敵であり、鍛冶屋としてもそれは例外ではない。……ルクスは一人だけ頭を傾げていたが。
「アシュレイさんの新作が出ないのは死活問題ですし……あたしでよければ、何でも協力し
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ