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「庶長子。」
庶長子
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なれど、
命が惜しくて
父上を裏切ったなどと
人に言われたくは有りません。」


「人質は磔、獄門ぞ?
恐ろしゅうは無いのか?」


「承知致しておりまする。

…恐ろしゅうなど無い!!」


拳を握り締めて
猫丸様は叫ぶ様に答えた。




ご立派です、若様。




「左様か、、、惜しき事よ。」


堀田播磨守は溜め息をついた。


「猫丸、そなた切腹の作法は?」

「守役の采女から教わりました。」


「ならば切腹申し付ける。」



堀田播磨守の温情であろう。
人質としては破格の扱いだ。

播磨守は元服前の猫丸様を
人質では無く、
一人前の武士として扱ったのだ。






「殿。」

昼を食している播磨守に
奥方様が話掛ける。

「何用じゃ。」

「お隣りの国の人質に
切腹を申し付けたとか。
まだ年端もいかぬ子供だと
言うでは有りませぬか?
…侍女達が
噂しておりましたゆえ。」

「その侍女とやらは
どこぞから聞いたのだ?
表の事に口を出すでない。」

「されど、殿は、、、
その子供をゆくゆくは
ちい姫の婿にと、仰ったそうな、」

「黙れ。
あれは利発じゃ。
ちい姫を断りよったわ。
ただの子供では無い、、
既に立派な男子だ。
生かしておいては
この先、ろくな事にはならん!」

「しかし、、、」

「くどい!!」









城下の外れの河原の一角。

暖かな陽射しに風が混じる。

竹矢来で区切られた中に
畳が敷かれていた。



見物人が集まりだした。
百姓に混じって
旅の商人の姿も見える。


当家の密使が居るのでは?
ただ、余りに遅すぎた…。




あの後、猫丸様は
別室に留め置かれ
お話が出来なかった。







後ろ手に縛られた猫丸様が
馬に乗せられて、、到着した。


護衛の武者に軽々と
馬から抱き下ろされた。




「なんと!まだ子供ではないか!」

「知らぬのか、
お隣の殿様の子じゃ。」

「同盟が手切れになったそうな。」

「まだ、十にも満たぬのでは?」


見物人が口々に噂をする。

「あれ、おいたわしや、
あれほど可愛らしい子を!」

「母上様がどれ程悲しむか!」

女どものすすり泣く声が
聞こえる。



猫丸様は
畳の上に座らされ
縄をほどかれた。




「どけっ!!」

人混みを掻き分け、前に、
猫丸様の
視線の先に回り込みたい!



猫丸様は青白いお顔で
小刻みに
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