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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十五話 ベーネミュンデ事件(その5)
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満があると見ました」
確かに、そういうところは有る。

「今回の一件も、グレーザーの書簡は私に来ました。それに手を出すなと言われた。面白くなさそうでしたね」
あのときの表情は覚えている。確かに面白くなさそうだった。
「……だからといって中将を危険にさらすような……」
「やりますよ、あの二人は」
「!」
あっさりと言ってのける中将に私は絶句した。

「あの二人にとって、グリューネワルト伯爵夫人は絶対です。彼女を守るためなら何でもするでしょう」
確かに提督の伯爵夫人への執着は異常だ。
「……」

「ベーネミュンデ侯爵夫人とコルプト子爵の噂が流れたとき、私たちが流したと直ぐわかったはずです。噂によってベーネミュンデ侯爵夫人が暴発する事を恐れたミューゼル大将は、侯爵夫人の目をそらす必要性を感じた」
辻褄は合う。しかしだからと言って。

「それが、あの皇帝の闇の左手ですか」
「ええ、まあ私の鼻を明かすという稚気も有ったかもしれない」
うんざりしたように中将が話す。
「そんな問題ではないでしょう! 殺されかけたんですよ。大体謝罪も無いと言うのは」
「謝罪は出来ません」
「!」

「謝罪は出来ないんです」
「どういうことです」
「私を信用していませんから」
「!」
まるで他人事のようだ、私は何もいえず中将を見詰めた。


「私が、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯に訴えたらどうなります?」
「……」
「彼らは皆ミューゼル大将とグリューネワルト伯爵夫人が私を利用してベーネミュンデ侯爵夫人を始末した、そう思うでしょうね」

確かにそうだろう。その先にあるのは……。
「……」
「これまで、グリューネワルト伯爵夫人が宮中で無事だったのは、いかなる意味でも政治的な活動をしなかったからです。しかし今後は違う。皇帝の寵姫と帝国軍大将、そしてローエングラム伯爵家を継承する人物が宮中の勢力争いに参加した、そう思うはずです」

「確かに、そうですね」
「ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯もそれを許すはずが無い。潰されますよ、簡単に」
「……」

「軍も同調するでしょう。今回、私が殺されかけた事でミュッケンベルガー元帥もエーレンベルク元帥も大分怒っています。ミューゼル大将もそれを知っている。だから知らぬ振りをしているんです」
「……」

つくづくうんざりした、と言った表情で話す中将に私は同情を禁じえなかった。確かにこれまでの中将の行動にミューゼル提督が納得できない部分があるのは事実だろう。しかし公平に見て、中将は十分にミューゼル提督のために動いている。誰もが認める事実だ。

それを受け入れられないと言うのは上に立つ人間として問題があるのではないか? さらに
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