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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十五話 ベーネミュンデ事件(その5)
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伴い会議室へおもむく。

今回の訪問は突然のものではない、事前に連絡があった。ミューゼル大将がいないときに会いたいというもので少々不安がある。司令官に内密の話とは一体なんなのか? 思い当たる節が無いだけに不安が募る。フィッツシモンズ少佐は会議室の外で見張りに立つ。かなり神経質になっている。中将は部屋に入るとすぐにロイエンタール少将を呼んでくれと言ってきた。どういうことだろう。

「大変だったようですね」
「ええ、後味の悪い事件でした」
「しかし、中将が無事でよかった」
「そう思いますか」
少し皮肉そうな口調で話す中将に、私は違和感を感じた。どういうことだ。

「ベーネミュンデ侯爵夫人の流産の事、ご存知ですか?」
「ええ、陛下からお聞きになりましたか?」
「哀れな話です。本当なら侯爵夫人は死なずに済んだはずなのに」
「どういうことです?」
侯爵夫人が死なずにすんだ? どういうことだ? 何かの手違いがあったのか。

中将の話してくれた内容は深刻なものだった。何者かが噂を捻じ曲げて広めた。標的は侯爵夫人ではなく、むしろ自分だったのではないか? そして侯爵夫人は嵌められたのではないか? 私も中将の考えに同感だった。標的は中将だろう。しかし誰が?

会議室のドアが開き、ロイエンタール少将が入ってきた。はて、少し緊張しているようだ、どうしたのか。中将はにこやかに迎え、自分の隣の椅子を勧める。そして何気なく切り出した。
「ロイエンタール少将、私が皇帝の闇の左手だと噂を広めたのは少将ですね?」
中将の言葉にロイエンタール少将が蒼白になった。

「ロイエンタール少将、本当か?」
「……」
「噂の出所を探りました。何人かの女性が浮かびましてね、いずれもロイエンタール少将の親しい女性でした」
「……」

「ミューゼル大将に頼まれた、そうですね」
「……そうです」
観念したようにロイエンタールが答える。
「馬鹿な、何と言う事をしたのだ。もう少しで中将は死ぬところだったのだぞ。大体中将は動くなと言ったはずだ」

「判っています、しかし……」
「自分とヴァレンシュタインのどちらの言う事を聞くのか、そう言われましたか?」
「……はい」
何と言う事だ。まるで子供ではないか。

中将はロイエンタール少将に今回の件を誰にも喋るなと口止めして解放した。会議室には私と中将の二人きりだ。心臓が飛び出しそうなほどの圧迫感を感じる。
「面白くないのでしょうね」
「?」

「先日のフレーゲル男爵の処置といい、今回の一件といい面白くないのでしょう」
何処か疲れたような口調だ。嫌気がさしているのか。
「フレーゲル男爵の件は仕方ないでしょう。提督も理解しているはずです」
「理解するのと納得するのは別問題ですよ。私に対して不
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