第四章
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「あんまりにも速くてな」
「それでか」
「御前も一本取られた」
「そうなったな」
「ああ、本当にだ」
「あれがだ」
先生がここで田所に言った。
「薙刀だ」
「脛ですか」
「速かったな」
「あそこで下段から突きにいかなかったら」
「小手も取れなかったな」
「相手が先に動いてです」
それでというのだ。
「よかったです」
「向こうも痺れを切らしたな」
「はい」
その通りという返事だった。
「あいつ意外とせっかちなんですね」
「その焦る性格でなかったらな」
「俺負けてましたね」
「そうだったな」
「ああ、だからだ」
それでとだ、先生は田所にあらためて言った。
「これでわかったな」
「薙刀はですね」
「油断出来ない相手だ」
「それで女の子でも」
「剣道でもそうだろ」
「はい、女の子でも強いです」
このことをだ、田所は今思い出した。実はこれまで中学でも高校でも女子部員の先輩の腕が立つ人に練習で負けたこともあったのだ。
「確かに」
「そういうことだ、女の子でもな」
「強いってことですね」
「そういうことだ、それと本当にだ」
先生は強い声でこのことをとりわけ言った。
「薙刀は怖いぞ」
「剣道が最強じゃないんですか」
「確かに剣道も強いが同じだけだ」
「薙刀は強いですか」
「だから御前も一本取られたんだ」
その脛をというのだ。
「剣道が最強だ、女の子だと思わないことだ」
「そういうことですね」
「わかったらだ」
それならというのだった。
「このことを忘れないでだ」
「これからもですね」
「剣道をしろ、いいな」
「わかりました」
「じゃあ走りに行くぞ」
先生は田所が小手も脱いだところを見てだ、他の部員達にも言った。
「これからな」
「わかりました」
「それじゃあ」
田所も他の部員達も頷いた、そしてだった。
彼等はランニングに出て本格的な部活の練習に入った。この日の部活の次の日。
田所からだ、栗橋のところに来て言った。
「悪かった」
「剣道のことと女の子のことね」
「ああ、俺が間違っていた」
「わかればいいと言いたいけれど」
ここで苦笑いになって言った栗橋だった。
「私もね」
「一本取られたからか」
「大きなことは言えないわね」
「それでか」
「私も修行が足りないわね」
痺れを切らして動いて小手を打たれたことを言うのだった。
「引き分けだからね」
「そう言うから」
「ええ、だからこのことはね」
「これで終わりか」
「あんたももう言わないでしょ」
「わかったからな」
田所も苦笑いだった。
「よくな」
「一本取られたからね」
「そういうことだ、俺はもう言わない」
「じゃあそういうことでね」
「ああ
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