4部分:第四章
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ことなのね」
「美味かったぞ」
今度は自画自賛する。
「俺は家事だってできるんだ、それがはじめてわかった」
「そうなの」
「ああ。それじゃあ今からな」
そうして彼は犬のロープを持ってまた言う。
「散歩に行って来る。それじゃあな」
「車には気をつけてね」
これは挨拶のようなものであった。
「いいわね」
「ああ、じゃあ行って来る」
こうして準は得意げな顔でバッキーの散歩に出て行った。佳子はそれを見届けてから家のリビングに入った。そこには彼女にとっては都合よく娘達がいた。彼女は娘達に尋ねた。
「お父さんだけれど」
「大変だったわよ」
「ねえ」
これが娘達の返答であった。佳子もこれは予想していた。
「そう、やっぱりね」
「だって何も知らないし」
「動きも危なっかしいし」
二人はそれぞれそう母に述べる。
「一から十まで側にいて教えたんだから」
「包丁の使い方だって知らなかったしね」
「かなり大変だったのね、それじゃあ」
娘達からの話だけで全てわかった。そこまで聞いてふう、と溜息をつくのだった。
「お疲れ様」
「有り難う、お母さん」
娘達は母の今の言葉ににこやかに笑って応えた。
「けれどあれよ」
「もう二度とね」
「それはわかってるわ」
佳子も心得たものだった。二人の話だけでそれは決めていた。
「お父さんにはね。二度とお料理はね」
「けれどお父さんはわかっていないみたいなのよ」
「そうよね」
麻奈と可奈は困った表情を見合わせて言い合う。
「自分で自分はわからないのね」
「困ったことにね」
「男は皆そうなのよ」
また実に意味深い佳子の言葉であった。
「自分ではできる、わかったつもりでも」
「実は違うのね」
「よく覚えておいてね」
そう娘達に語る。
「それを気付かさせずにフォローするのも女の子の仕事だってね」
「何かそれって」
「凄く大変そう」
「それがそうでもないのよ」
娘達に笑って述べる。
「かなり抜けているから」
「そうなの」
「ええ。あんまり力を張らずにね。やるといいわ」
「わかったわ」
「じゃあお父さんにもね」
「ええ、今まで通りね。気付かさせずに」
そう話をするのだった。家の女達の話には全く気付かずに能天気に散歩を続ける準は外でくしゃみをした。けれどそれを風邪のせいにするだけであった。
パパの手料理 完
2007・12・1
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