2部分:第二章
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第二章
その夜。彼は色々と買い物をして家に帰った。家に帰るともう娘達が家事の殆どを済ませてしまっていた。
「お帰り、お父さん」
「もうお風呂も沸いてるよ」
「あっ、早いな」
彼は娘達のその言葉にまずは頬を緩ませた。何だかんだで娘達は可愛いのだ。
「もうなのか」
「洗濯もしておいたから」
「ゆっくりしてね」
二人は本当に双子みたいに息のあった感じで準に言う。準はそんな娘達の言葉を聞いて頬を緩ませ続ける。その中で彼は言うのだった。
「そうか、だったらな」
「何?」
「夕食はお父さんに任せておいてくれ。もう休んでいいぞ」
「えっ!?」
「今何て!?」
二人は今の言葉を聞いて瞬間的に顔を凍りつかせたのだった。
「お父さんお料理出来ないじゃない」
「それでするの!?本当に!?」
「何、大丈夫だ」
しかし準は不安を露わにする娘達にまた言う。
「お父さんだってやればできるんだ。だからな」
「ねえ加奈」
麻奈が不安に満ちた顔で加奈に声をかけた。
「大丈夫だと思う?本当に」
「お姉ちゃんはどう思ってるの?」
「加奈と同じことよ」
これで充分であった。
「絶対にね」
「そう。じゃあやっぱり」
「大変なことになりそうね」
麻奈はそう言ってふう、と溜息をつくのだった。
「折角バッキーのお散歩も御飯もやって後はこれだけだと思ったのに」
「最後の最後で大変なことになりそうね」
加奈もこれからのことを絶望視していた。自分達の父を完全に信頼しているからこそであった。信頼は何も期待につながるだけではない。時として絶望にもつながるものである。それが今であった。二人は明らかに絶望していたのであった。
しかし準は乗り気であった。自分は絶対にやれると思っていた。すぐに食材を持って台所に入るのだった。台所はいつも佳子によって奇麗にされている。それに今日は麻奈と加奈がとりわけ念入りに掃除してありあちこちがピカピカと光ってさえいた。彼はそこに自信満々で乗り込むのであった。
「さてと、まずは調味料だな」
「何処にあるかわかってるの?」
麻奈が心配そうに父に問うた。
「そこだけれど」
「ああ、そこにあるのか」
知らなかった。はじめて知った顔で麻奈の指差した方を見るのが何よりの証拠であった。
「わかった、じゃあまずはお塩だな」
「スプーンで加減してね」
今度は加奈が言う。
「わかってると思うけれど」
「ああ、わかってるぞ」
実はわかっていなかったのがわかる言葉だった。目が泳いでいるからそれは一目瞭然であった。彼は嘘がつくのが下手な性分であったのだ。
「それで何を作るの?」
「何かって?」
「だから何を作るのよ」
麻奈はさらに不安を感じて父に問うた。
「それは考えてあるのよね」
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