暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
暗躍はディナーの後で
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そりゃ気付かねっつのどこのバカが国宝級の極秘施設の保管庫にそんな庶民的なもんがあると思うよー」



ぐ、と。

エリックは無作法で無遠慮に踏み込んできた声に、出そうとしていた言葉を呑み込んだ。

銃器に囲まれた青年は、あまりにも、あまりにも無防備な――――無邪気な笑みを浮かべている。いっそ不気味なほどの綺麗な笑顔の東洋人を男はこの時、本気で気持ちが悪いと思った。

自然、握りしめた拳と視線に力がこもるが、小日向相馬はそんなことは歯牙にもかけない。

いや、そもそも。

そもそもの話、もうこの青年は――――

「いやー、もう一、二機分はバラ撒きたいトコだったがなぁ。ま、許容範囲内だろ」

もう、周りを見てすらいない。

自らに照準を合わせる無数の銃口の洞も、それらを取り巻く殺気も、等しく彼の前では空気となる。

いっそ鼻唄でも歌いそうな気軽さで、小日向相馬は端末を取り出しスケジューラを起動する。

変異層圏(ミラーレイヤー)は無事完成、……っと。ん、《Gコード》方面も順調だな。ザ・シードを介した上層(オーバーレイ)ネットワークとソノブイ十機間のリンク構築も済んだことだし、うん、この辺が潮時かな」

「な、何を……」

とくに意図しての言葉ではない。

ただ、思わずというふうに出た言葉に、意外にも小日向相馬は笑ったまま返答を返した。

「変革ですよ、大臣」

端末を適当に放り投げた青年は、男をテーブルに置き去りにして静かに歩み出す。

何も持たず、ただ無造作に歩を進める彼に圧されるように、人垣が割れる。

コツ、コツ、という靴音だけが空間に沁み込んでいく

静寂だけが場を支配している中、それさえも無視したような音声で小日向相馬は言った。

「時代に合わない天才っつーのはいるもんだ。例えば、無線送電を考えたニコラ=テスラ。重力波の存在を提唱したアインシュタイン……。《持ってる》ヤツらがいちいち時代に合わせる必要がどこにある?時代を乗り越えてこその天才だろーに」

カツ、と青年はレストランのある一点で立ち止まる。

首を巡らせ、底知れない笑みを向けてくる相馬を険しい顔で睨みつけたまま、エリックは口を開いた。

「……何が言いたい」

「やだなーただの討論じゃないですか、お得意でしょこーいうの。常識(モラル)っつーのは超えることでそいつの価値が決まると思うんだがなーて話」

「……………………」

「まぁ?《Gコード》の単語にすら辿り付いてないような、常識に囚われたアンタには――――」

軽く周囲を見回し、何度か頷いた青年は、がぱっと口を開けた。

全員が一様に柳眉を寄せる中、小日向相馬は勢いよく上顎を振り下ろした。

自らの――――舌の上に。

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