暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
暗躍はディナーの後で
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として一時的な氷河期さえ到来させるという究極の戦略兵器、《凍土招来(ニヴル・スレプリカ)》を――――!!」

「だからですよ、大臣」

小日向相馬は否定をしない。

「俺の中で、人工衛星関連についてはもう『掘り終わった』技術でしかありません。科学者が完璧と思ったら、その分野はもう進歩はしない。俺はもう、衛星には興味が湧かないんですよ」

スクールに通う子供がクレヨンで描いたサイキョーの兵器のほうがまだ可愛げのありそうな、荒唐無稽を遥か彼方に置き去りにしたような話を、否定しない。

それがエリックの顔を不気味に痙攣させる。

「それにノルウェー(あなたがた)には、スヴァールバル諸島のイザヴェル基地(ベース)で試験調整中の《M5》があるでしょう。理論上その四機だけで現行文明に壊滅的打撃を与えられる黙示録の四騎士がいる以上、軍事的意味では俺がいる意義は薄い」

眼前に座っているのが、本当の意味で人間なのかどうか。根本的なところで疑問に思うような、そんな言葉だった。

その顔を無感動な瞳で一瞥し、

「……残念なら大臣、俺も忙しいので今日はこの辺りで」

皿上に残っていた残りのサーモンを若干意地汚く掻き込み、青年は忙しなく立ち上がる。

その動作は言外に、これ以上の交渉を跳ね除ける拒絶の意思を伝えていた。

黒衣の襟を正して退出の意を言う相馬に対し、エリックはしばし何も言わなかった。

だが、テーブル上に置かれた拳が小刻みに震えているのが何よりも彼の心情を表している。

追い詰められた鼠は猫をも喰らう。

母国のことわざを思い起こす青年の前で、俯いた男の口から怨嗟のような低い声が漏れ出た。

「……このまま返すと思うなよ、若造」

ドロドロとした人間の悪感情全てが込められたようなその一言を皮切りに。

メインディッシュを運んでいたボーイが。

仲良くディナーを楽しむ老夫婦が。

けだるげに頬を付き、妖艶にカクテルを煽る女性が。

厨房で火柱を上げる肉の塊と格闘していたシェフが。

全員、小日向相馬に顔を向けた。

そして、彼らの手には一様に火器――――銃が握られている。

首ではなく視線だけでそれらを確かめた青年は、小さくため息をついた。

「これは……どういうおつもりですか?大臣」

「ソウマ、ソウマ。本当は私もこんなことはしたくない。だが、君のドロップアウトが我が国にもたらす損失は計り知れないのだよ」

「……契約が結ばれ、俺はそれに従って終了した。契約を持ち掛けてきたのはそちらですよ?」



「では貴様が衛星に仕込んだモノはなんだ?」



一瞬。

確実に、小日向相馬の動きが止まった。

その様子に糸のように目を細めながら
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