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予言
2部分:第二章
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第二章

「ねえ奥野」
「何だよ」
「これ、読み比べてみて」
 笑いを必死で抑えながら彼に兄が持っているその本を出した。ついでに彼から借りていたあの本もだ。これは返すからである。
「全部。いいわね」
「全部って」
「斜め読みでもいいから」
 この辺りは兄の言葉の受け売りである。
「だから。読んでみて」
「それで世界が終わらないのかよ」
「いいから読みなさいって」
 今度の言葉は少し強くさせた。
「わかったわね」
「わかったよ。それじゃあな」
「ええ。読んで」
 言葉を一転して柔らかくさせて本を差し出して読ませた。こうして彼はその本を読み出したがその顔が見る見るうちに変わりだした。そうして言うのだった。
「な、何だよこれって」
「わかった?」
「わかったも何も」
 まさに目を皿のようにさせての言葉だった。
「何だよ。本によって言ってることが全然違うじゃないか」
「しかも同じ予言でね」
「しかもこの本だと」
 賢治が出した本のうちの一冊を出して泰子に言う。
「人類は隕石で滅亡するってことになってるじゃないか」
「他の本では謎の伝染病になってるわよ」
「ああ、確かに」
 読んでみればその通りだった。
「何だよ、しかも」
「そうでしょ。予言されていたって絶対に後で言ってるでしょ」
「そうだよな。見れば」
 そうなのだった。あとになって予言されていた、この表現ばかり目立つ。考えてみれば実に奇妙なことなのだ。何故なら既にわかっている筈のことだからだ。
「そう言ってばっかりだよな。それでそこから」
「この予言は絶対に当たるって書いてるわよね」
「ああ」
 これもその通りなのだった。泰子の言葉の方が遥かに的確であった。
「いつもそうなってるな、確かに」
「しかもよ」
 泰子は実にそのことを指摘してからまた言うのだった。
「それから色々と言うじゃない」
「あれが起こるこれが起こるってな」
「けれど昔の予言の本だと」
 ここで出て来るのが昔出ていた予言の本である。そこを読むとこれまた実に面白いことがわかるのだった。まるで奇術のトリックがわかるように。
「ほら、全然外れてるわよね」
「ええと、巨人が優勝するか」
 見ればそんな予言もあった。
「しかも堀内の下で黄金時代だって!?」
「外れてるわよね、完璧に」
「あいつクビになったじゃねえか」
 こう言い捨てる実だった。
「負けまくってな」
「ヘボ采配でね。まあ巨人が負けるのはね」
「そりゃいいことだからな」
 巨人が嫌いな彼等にとっては外れて万々歳の予言であったのだった。そのことを隠しもせずに話を続ける。
「それでしかも」
「北京オリンピックで未曾有のテロか」
「当たった?」
「当たってねえよな。全然な」
「そ
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